被災地から得たもの | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

被災地から得たもの

社会福祉法人養和会の障害福祉サービス事業所、F&Y境港(境港市中野町)の所長で精神保健福祉士の広江仁さん(45)は、心のケアや支援活動の準備のために、3月と4月の2回、被災地入りした。


被災者の声にじっくりと耳を傾ける傾聴を基本とした支援を通して感じたのは、高齢者や障害者といった災害時要援護者への対応の大切さ。「要援護者は災害時に弱い立場。災害に備え、障害者ら当事者も交えた防災計画の見直しを」と訴える。

■心に寄り添う

 精神保健福祉士は、精神科医療機関などを活動の場に、精神障害がある人の社会参加支援のほか、医療や生活に関わる悩みの解決を手助けする国家資格。日頃から多くの人の心に寄り添う。

 被災地支援は、日本精神保健福祉士協会としての活動。広江さんを委員長に同協会内で災害時に何ができるのか検討した成果を生かし、全国の精神保健福祉士が支援活動をする準備のために3月23~25日と4月18~23日、岩手、宮城、福島の各県を回って現地の要望を聞き取った。

 中でも、地震と津波の被害に加えて福島第1原発の事故によって一時、屋内退避区域となった30キロ圏内の福島県南相馬市の状況は深刻。「30キロ圏内ということで支援の手が届いていなかった」。子どもがいる家庭など多くの市民が他の場所に避難していたが、お年寄りたちが避難所に取り残されていたという。

 現地では医療チームも活動していたが、多忙を極め、被災者の話をじっくりと聴く時間がない。「われわれこころのケアチームは医療チームと連携しながら1時間でも時間を掛けてつらい気持ちや怒り、不安を聴き、解決のお手伝いをした」と話し、「原発の問題で先行きは不透明。心のケアは重要性を増している」と強調する。

■官民で人材確保を

 心のケアの必要性は被災者だけにとどまらない。「行政職員や避難所の責任者も疲弊している。責任者は自分を差し置いて他の避難者を気遣い、心情を打ち明けるのを遠慮している」。現在も養和会の精神保健福祉士を派遣するなど支援を継続している。

 被災地で実感したのは、災害に備える意識と行動の大切さだ。以前携わったある市の防災計画の点検、見直しでは、行政職員だけでなく災害時要援護の当事者側も交えて作業をしていたといい、「避難所に指定されている体育館に灯油の備えがないといった事態が起きないためにも、災害前に検証しなくては」と気を引き締める。

 今後の課題については「医療と同様に重要な心のケアをできる人材を確保できるか。行政は民間の協力を得ていつでも心のケアができる支援態勢を整えておく必要がある」と提言する。

日本海新聞より