改修負担で閉鎖 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

改修負担で閉鎖

改修負担で閉鎖も


民家を転用した認知症高齢者らのグループホーム(GH)に対し、建築基準法の用途に従って防火対策上の改修を求めるかどうか、自治体間で方針にばらつきがあることが、全国19政令市への取材で分かった。同法を厳格に適用した場合、用途変更に伴う改修工事で多額の費用がかかるケースもあり、資金不足で閉鎖に追い込まれたGHもある。一方で多数が犠牲になるGH火災も後を絶たず、自治体は「福祉の充実」と「安全の確保」の両立に頭を悩ませる。

 建築基準法で民家は「住宅」だが、GHは「寄宿舎」などに該当し、準耐火性の壁や非常用照明の設置などが義務付けられる。昨年3月に7人が死亡した札幌市のGH火災では、用途変更の申請がされていなかったことが問題化。国土交通省が緊急調査した結果、全国391カ所のGHが無届けだった。

 毎日新聞が政令市に取材したところ、この時の調査で用途変更に関する違反を確認したのは14市。うち6市(札幌、川崎、新潟、名古屋、京都、北九州)は、スプリンクラーなどがあれば壁の改修までは求めないなど、費用負担などを考慮して柔軟に指導していた。札幌市は「入居者がいると大幅改修は難しい。別の設備による安全性確保を指導している」、北九州市は「非常用照明は付けてもらうが、施設の状況を見て対応する」と話す。

 一方、7市(さいたま、千葉、相模原、大阪、神戸、広島、福岡)は「あくまでも法律に基づき指導する」との立場。建物の改修工事も含めた是正を求めており「悪質な場合は罰則適用もある」(さいたま市)という。残る横浜市は厳格な対応を原則に、今後の現地調査で指導内容を決めるという。

 ただ、多くの事業者は資金の余裕がないのが実情で、富山市では昨年末、改修の負担に耐えられなくなったGHが閉鎖に追い込まれ、入居していた30~60代の障害者4人が民間アパートに移った。

 国交省は「速やかな是正の方向の指導を要請している」との姿勢だが、大分大の山崎栄一准教授(行政法学)は「安全性を優先しすぎると、規制についていけない施設が出て福祉サービスが行き届かなくなる。こうしたジレンマを解消するための助成制度や緩和措置が必要だ」と指摘している。【金子淳、片平知宏】

 ◇札幌のグループホーム火災

 昨年3月13日未明、札幌市北区の認知症高齢者GH「みらい とんでん」の1階ストーブ付近から出火。木造2階建てを全焼し、入居していた65~92歳の男女7人が死亡、当直の女性職員が重傷を負った。施設にはスプリンクラーや自動火災報知設備、火災通報装置がなかったが、いずれも設置義務はなかった。

毎日新聞 2011年5月4日 2時08分