在宅の高齢者に掃除や洗濯提供 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

在宅の高齢者に掃除や洗濯提供

■保険外で暮らし支援を拡充

 単身世帯や老々世帯でも高齢者が家で暮らしやすいよう、岐阜県の社会福祉法人「新生会」が掃除や洗濯のサービスを始めた。介護保険にも調理や掃除を助けるサービスはあるが、保険から外すことでサービスを開拓し、未経験者に雇用の場を提供する。介護保険の訪問ヘルパーは身体介護に専念させることで担い手不足の解消や、賃金増も見込める。東日本大震災を経て介護保険制度の改正に向けた財源調達が厳しくなるのは必至で、現場は模索を続けている。(佐藤好美)

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 岐阜県池田町にある社会福祉法人「新生会」のスタッフが黄色のランドリーバッグを持って車を降りた。坂井正さん(82)=仮名=に洗濯したバスタオルや寝間着などを届けるためだ。

 坂井さんは妻(78)の介護を始めて3年目。パーキンソン病を患っていた妻は脳梗塞で倒れ、今は要介護5で寝たきり。在宅の暮らしは、日に3回の訪問介護、週2回の訪問看護、隔週の訪問診療、週1回の訪問入浴などで支えられている。サービスはほぼ満額だ。

 以前は訪問入浴の後で出る大量の洗濯物が悩みの種だったが、新生会でランドリーサービスが始まって楽になった。「訪問入浴の後は、ぬれたバスタオルが5~6枚も出る。家の洗濯機で洗っていましたが、かさばるし、雪の日や梅雨時は乾かない。家中にぶら下げてエアコンをかけて乾かしていました」という。

 それでなくても在宅介護は高齢男性には難儀だ。庭仕事や畑仕事もあるし、食事の支度や買い物もある。ランドリーサービスは介護保険の対象ではないから、1バッグ500円かかるが、坂井さんは「今まで時間とお金をかけて洗濯していたことを思えば高くない。他にすることはたくさんあるので、ちょっとでも時間が空いたら、横になって休息するようにしています」と話している。


■新規事業で雇用創出 ヘルパー賃金増も?

 ◆国の補助金を利用

 昨年6月、新生会が介護保険外で始めたサービスはランドリーと掃除(30分500円)。対象者は65歳以上の高齢者や障害児のいる家庭で、利用者は今年3月時点でランドリーが102件、掃除が75件(重複あり)に上った。評判は上々だという。

 開始にあたっては、国の「ふるさと雇用再生事業」の補助金を利用した。新規事業を興して雇用の場をつくる補助金で、新生会はサービスの担い手として、仕事を失った40、50代の3人を雇用した。

 新生会総合ケアセンター「サンビレッジ」の馬淵規嘉(のりひろ)施設長は「掃除や調理といった生活援助には専門技能はそれほど必要でない。資格を持ち、専門技能のあるヘルパーの仕事と分離できないかと考えた」という。

 ◆不十分な生活援助

 背景には、訪問ヘルパーが掃除や調理を助ける介護保険の「生活援助」が中途半端なことがある。全国平均を見ると、要介護度が低い人の利用が多く、介護保険財政が厳しくなる中で、制度改正のたびに縮小が検討される。しかし、単身者や独居の人が家で暮らし続けるサービスとしては、質量ともに不十分だ。さらに、ヘルパーの介護技術をさほど必要としないサービスだから介護報酬が低く、ヘルパーの賃金が上がらない一因にもなっている。

 馬淵施設長は「ヘルパーは生活援助では専門性を生かせず、携わっていても賃金は上がっていかない。今後、担い手不足も深刻化する中で掃除や調理などの生活援助は切り離して、経験のない人を雇うことにつなげた方がいい」という。


◆“介護保険的”要素も

 提供したのは、単なる家事代行ではない。目的は生活支援だから、街のクリーニングと違って下着の洗濯も受ける。だが、アイロンはかけない。

 掃除では、高齢者と一緒に掃除するなど“介護保険的”なサービス提供に努めた。新規雇用の3人は当初の研修以外に、併設の特別養護老人ホームでも研修を積み、自立支援を心掛けた。今や2人がヘルパー2級を取得し、1人は社会福祉士を取る勉強中で、キャリアパスとしてもよかったようだ。

 ただ、掃除やランドリーサービス実施後も、新生会の訪問介護(平均要介護度3・1)に占める生活援助の割合は変わらなかった。もともとプランの90%が身体介護で、生活援助を含むプランはわずか10%。精査したプランでは、認知症の人などで生活援助を分離できないケースもあるようだ。

 掃除やランドリーサービスは今後、介護保険に導入予定の24時間巡回サービスとの連携も期待される。補助金は昨年度で切れ、経営上は合わないが、馬淵施設長は「これも社会福祉法人の役割。ニーズ調査でいろいろな可能性が浮かんだ。民間事業者がやらない過疎地への買い物サービスや雪かきなども検討中です。介護保険の財源は限られ、担い手も足りない。身体介護は専門職であるヘルパーに、生活援助はボランティアや資格のない人に分担して、少しでも介護保険財源の安定化につなげたい」と話している。


msn産経ニュースより


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