在宅障害者に支援届かず  | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

在宅障害者に支援届かず 

震災から1カ月たつが、被災地の在宅障害者には、いまだ支援が届いていない実態がある。


知的障害のある長女(29)らと宮城県石巻市向陽町の市営住宅に暮らす馬場きり子さん(69)は両足が不自由で震災後、両手でつえをついて買い物や給水に出かけている。


救援物資は足りず、所持金も残りわずか。


月に何度か様子を見に訪ねてきていた市職員も震災後は現れない。馬場さんは「誰かに声をかけてほしい」と悲鳴を上げている。


馬場さんはもともと両足に障害があるうえ、2月21日に自転車に乗っていて乗用車との交通事故に遭い、右足骨折で全治6週間の重傷を負い、市内の病院に運ばれた。3月11日、入院先で地震に襲われた。ベッドが激しく動き、柵につかまって必死に耐えた。

障害者施設に通う長女とは即日連絡がついた。


安否が分からなかった同居の次男が震災2日目、病室に現れ、自宅がかろうじて津波被害を逃れたことを知らせてくれた。


次男は「食べる物がないから避難所に行ったが、『初日に来た人以外はだめ』と入れてくれなかった」と言う。馬場さんはまもなく退院し、娘も施設が浸水で使えなくなったため自宅に戻った。


避難所に頼れない3人の在宅避難生活が始まった。

自治会を通じた救援物資はごくわずか。知人が分けてくれる米や飲料水を加えても、とても足りない。自転車なら片道10分ほどのスーパーや給水所まで40分かけて歩き、長女に荷物を持ってもらって帰る。

 収入は馬場さんと長女の障害者年金だが、足の治療費がかさみ、15日の振込予定日まで残り1万円しかない。生活相談に乗ってくれていた市の職員も震災後はまったく訪れず、窮状を訴える相手もいない。

馬場さんは以前から進んでやっていた自宅前のごみ収集所の整理を、今も毎日続けている。「つらい時ほど頑張らなくては」と思うからだ。


被災した家具や衣類などが捨てられ、収集所には大量のごみが積もる。馬場さんは、それらを黙々と片付ける。

心の支えは家族の存在だ。


10日午後、神奈川県平塚市の長男家族から救援物資が届いた。


玄関先で段ボール箱を開くと、衣類や食料とともに、6歳の孫が書いた手紙が入っていた。


小学校に上がったばかりの女の子だ。

「いちねんせいになりました。たくさんべんきょうして、ともだちたくさんつくるよ。またあそびにいくからまっててね。おげんきで」

馬場さんは「支えてくれる人もいる。でも地域からは、私たちは見放されている。誰かに声をかけてほしい」と訴える。【黒川晋史】


毎日新聞より