介護保険料の引き上げ | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

介護保険料の引き上げ

介護保険制度の見直しが進んでいる。サービス増や介護職の処遇改善などで平成24年度以降の総費用が膨らむのは避けられないが、負担増の合意はできていない。65歳以上の高齢者の平均保険料は月5千円を超える見通しだが、民主党は昨年末、「5千円の壁に配慮が必要」とする提言をまとめた。同党厚生労働部門会議座長の石毛★子衆院議員と、病気療養中ながら「高齢者の負担を避けるべきでない」と訴える龍谷大学の池田省三教授に話を聞いた。(佐藤好美)


≪石毛★子氏≫


高齢者からは月5000円が上限


 ●財源の精査必要

 --65歳以上の人の介護保険料は、やはり5千円が限界か

 「基本的にはそう思う。5千円は全国平均の基準額。世帯全員が住民税非課税ならもっと安いが、世帯非課税でないと厳しい。年金収入の人の課税最低限が年額155万円くらいとすると、月の収入は13万円。月5千円はむしろ上限です。課税最低限を上げる施策は税制で考えてほしいが、それをおいても、保険料はやはり5千円くらいではないか」

 --提言では保険料引き上げ以外の負担増も見送ったが、財源をどうするか

 「介護保険には特別養護老人ホーム入所者への補足給付(入所補助)があるが、例えば、これを税に移せるかどうか。介護保険の財源は自治体の『地域支援事業』にも入っているが、基盤整備的な部分を税に移せるかどうかもある。それで捻出できるお金は5千円が4800円になるような話ではないかもしれないが、5200円になるのを5千円とか5100円にとどめられるか、さじ加減がとても大事だ。与謝野馨大臣の下で始まる税と社会保障のプロジェクトと、介護報酬改定がどう平仄(ひょうそく)が合ってくるかということもある」

●生活援助は必要

 --掃除や家事などの生活援助を削る案もあり、意見が割れた

 「私はなくすべきでないと思う。高齢期には、起きて、食事して、人と交わって、排泄(はいせつ)して、寝ることがすごく大変になる。料理や掃除は利用者の生活する意欲への支援。食事を取る意欲も乏しい人には生活援助が必要です。自治体事業にしてもいいが、ボランティアで定期的にできる保証はない。しかも、生活援助を利用する人は圧倒的に多い。こうした軽度の人がいずれ重度になり身体介護を使うとはかぎらない。厚生労働省は『中重度に給付を集中する』というが、使わない人が多い介護保険に保険料を納める合意ができるか疑問だ」

 --公費負担増なら、現役世代に負担が偏るとの意見もある

 「負担は利用料か保険料か税かの3つしかないから、税で負担することは大いにある。そのためにも、地元や親御さんの住む地域でサービスの充実が見えなければいけない。本当に安心できる社会なら、日常生活費があれば済む。しかし、今は安心できる体制がないから必死に貯蓄する。このジレンマをどう解きほぐし、『負担し合いましょう』という社会を作るか。大事なのは利用者と利用可能性のある65歳以上の人が判断できる情報が公開されること。いや応なく負担していただく時代になるから、情報が質と量で提供され、考える時間があることがすごく重要です」

≪池田省三氏≫


中高所得層は負担惜しむな


 ○団塊世代は誇り持て

 --介護保険制度と報酬改定の先行きをどう見るか

 「お金がなければ、介護報酬を下げるしかない。負担増もサービス減もすべて先送りした民主党の提言通りになれば、介護報酬は減額かプラスマイナスゼロ。民主党は政権責任がゼロです」

--民主党は「保険料には5千円の壁がある」と

 「壁なんてどこにもない。5千円は全国平均だから、所得に応じて2500円にも1万円にもなる。5千円の数字にとらわれ過ぎている。なぜ、6千円ではいけないのか。団塊世代は年金受給では逃げ切る世代です。厚生年金なら夫婦で20万円を超える。保険料を1万円払ってもおかしくない。中高所得層は負担を惜しむなと。一部のお年寄りに誇りが欠け始めている。国が、社会が、家族がやってくれない、と“くれない族”の固まりになっている。高齢者の矜持(きょうじ)はどこへいったんでしょう。団塊世代は誇りを持って生きたいですよね」

○増税では解決しない

 --消費税増に期待し、保険料よりも公費(税)負担を増やそうという意見もある

 「消費税ならみんなが負担すると思われている。しかし、消費税を上げれば物価が上がる。物価が上がれば年金も上がる。年金生活者は困りません。介護保険は高齢者の制度なのに、高齢者が負担せず、同意が取れるのか。しかも、消費税を上げても、年金、医療、財政再建に充てるのが先で、介護保険の費用なんて出ません。結局、赤字国債に頼るしかない。それは子供や孫の財布に手を突っ込むことです。明治の人はそんなことはしなかった。増税は必要だが、介護保険のためではありません。しかも、公費負担が増えれば予算に拘束される。介護保険では予想外にサービスが増えても、後から保険料で埋められるが、公費だと税収分しか使えない。税収が少ないと、自治体がサービスを絞る。すごく使いづらくなります」

--サービス減も必要だと?

 「介護給付は仕分けが必要です。民主党の得意技でしょう? 無駄は結構ある。1億円の貯金があっても、施設入所に補足給付(入所補助)が出る。ご飯作り、お話し相手のサービス。単身や老夫婦が増える時代に、家族代わりのサービスを提供するのは財政的に不可能です。外出した方が自立支援になるし、自治体も介護予防のデイサービスなら廉価に用意できる。北欧がよく引き合いに出されるが、デンマークの家事援助は月2~4回です。日本は週2回で話し相手になる。話し相手は大切ですが、社会保険で誰にでもすることじゃない。自治体サービスで対象を絞ってやることです」

【プロフィル】池田省三

 いけだ・しょうぞう 龍谷大学社会学部教授。昭和21年、岐阜市生まれ。64歳。中央大学法学部卒。NPO法人「地域ケア政策ネットワーク」研究主幹。「介護の社会化を進める一万人市民委員会2010」政策委員。今月、「介護保険論-福祉の解体と再生」(中央法規)を刊行予定。


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110204/plc11020407470002-n3.htm  より