伊藤昌司「相続法」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「グローチウスは,所有権の自由から遺言権を演繹し、法定相続権は死者の意思の推測に基づくと説いた。この学説(意思説=遺言自由説)は、ローマ法の遺言相続(相続人指定遺言)制度を擁護するものとして、大土地所有階層に支持された。これに対して、プーフェンドルフは、遺言者は遺言が効力を生ずる時には既に死亡している以上、もはや所有権の主体ではないはずであることを指摘して、所有権から遺言権を演繹する論理を批判した。ルッソーは、後者の見解に依拠して遺言の自由に反対したが、これが大土地所有階層の特権を批判した人々(フランス大革命で言えば、ロベスピエールに代表されるモンターニュ派)の基本的立場である。遺言自由説に反対する市民革命派の人々は、法定相続権の根拠を血縁や家族的共有関係に求める学説を援用して、平等の原理による法定相続にこそ優位性を認めるように主張した。」