中島義道「哲学熟の風景」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「ニーチェだが、ニーチェが寝っ転がっても読めるところがあるから、やっかいなんだ。じつは、彼の文章を正確に読解するのは極めて難しいのだが、誰でも自己流に好きなところだけを拾い読みして分かったつもりになりやすい。だから、芥川龍之介とか三島由紀夫とか小林秀雄といった哲学的センスのない文学者でもニーチェだけはよく読むわけだ。そればかりではない、画家だって音楽家だってニーチェは読む。わかったつもりになりやすいんだねえ。それにニーチェの思想は極めて危険で、現代日本の倫理観と真っ向から対立するのに、それに蓋をしてきれいに毒を抜いて市場に出す、という欺瞞も横行している。あの『超訳ニーチェの言葉』がてんけいてきだがね・・・。」」