田中美知太郎「哲学入門」その2から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「哲学とは何であり、何を仕事とするものなのでしょうか。もっとも古く、プラトンによって言われ、今日になってもよく引きあいにだされる言葉で、哲学は驚きから始まるというのがあります。ただの驚きというよりも、驚きあやしむとか、驚きいぶかるとかいうほどの意味ですが、哲学というものは、一般に言えば、驚きあやしみ、これはいったい何だろうか、いったいどうして、これはこうなのかという問いそのものにほかならないのです。哲学の文字どおりの意味は、よく言われるように、智を愛し求めるということですが、このようなことがおこなわれるためには、まず驚きあやしむこと、つまり問いをもつことが必要なのでして、何でもわかりきっていて、何の疑問も起こらないような状態にあるのでは、哲学というものは生じません。」