田中美知太郎「哲学入門」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「すべての問題に、すべての人が同じ興味をもつわけではない。しかしいわゆるマス・コミュニケーションの影響で、大部分に人たちが、一律に次から次へといろいろな問題に追いまわされているということは、誰でも気づいている事実だということができるだろう。しかしそういうようなことで、本当に私たちの手元に残る問題は、いったいどれだけあるのだろうか。ずいぶんいろいろな問題があったようで、実際は何の問題もないというような虚しさが、後に残るだけのことなのではないか。」

 

「『サミング・アップ』の終わりの14章ばかりにわたる、モームのかなり長い哲学談義である。かれが哲学に特別の興味をもち、哲学についての立派な知識をもっていることを発見したのは、わたしには意外な、しかし愉快な発見だった。彼自身の語るところによると、『人間の絆』という書名は、スピノザの「エティカ」の中の題名からとられたということである。『はじめてスピノザを読んだことは、一生のうちでも際立った経験の一つだと思っている。それは、大山脈を見たときのような、壮麗な、勝ち誇ったような感じで、わたしを満たしたものだった。』」