エマニュエル・トッド「問題は英国ではない、EUなのだ」その2 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「日本のパートナーにふさわしいのはアメリカとロシアです。英米系の地政学者は「海洋勢力(日米英)」と『大陸勢力(中露)』を区別しますが、日本人はこの二分法に陥るべきではありません。ロシアとの関係構築は、中国の存在を考えれば、地政学的には理に適っています。ただそれをアメリカの尊厳を傷つけない仕方で進める必要があります。」

 

「一方、アメリカには、もはや『世界の警察官』を独力で担えるだけの力はありません。オバマ大統領は『アジア重視』を掲げているのに、この地域には空母一隻しか配備できていません。その意味で日本は自主的な防衛力を整えつつ、アメリカを助けるために、これまで以上に軍事的、技術的に貢献すべきです。」

 

「これは『日本の軍国主義化』を意味するわけではありません。ヨーロッパから見て、日本のイメージは悪くありません。『伝統』と『モダン』が絶妙にブレンドされた、洗練された国というイメージです。ただ、『第二次大戦時の軍国日本の横暴』という中国のプロパガンダは無視できない影響力を持っています。さらに日本人自身が自分たちの国が危険は国であると必要以上に思い込んでいるようです。」

 

「しかし、安全保障は、過去の歴史とは区別してプラグマティックに考えるべきです。確かに明治以降、欧米を模倣して日本も軍事大国化しましたが、日本の長い歴史から見れば例外的な一時期です。むしろ総体として平和の歴史でした。とくに江戸時代には、250年もの間、戦争もせずに文化と経済を飛躍的に発展させたのです。世界的にもまれなことです。日本はそうした平和な歴史をアピールしながら、アメリカを助けるために一隻か二隻、空母をつくるべきです。」