藤沢道郎「物語イタリアの歴史Ⅱ」その3 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「『物語 イタリアの歴史』の隠し味がなにか分かりますか?と出版後の藤沢さんはくつろいだ様子で、いつも以上に饒舌だった。『あとがきに書いてないから、気づいてもらえないのかなあ。どの話にもひとつずつ違う都市がちりばめられているんですよ。イタリアめぐりの旅も楽しめる仕掛けです。』と、得意顔で言われる。そういえば、ラヴェンナのガラ・プラキディア、トスカーナの女伯マティルデ、アッシージの聖フランチェスコ、そして次に登場する皇帝フェデリーコの宮廷はシチリア島のパレルモだ。神をも恐れぬ艶笑譚『デカメロン』の作者ボッカチオが人間観察に励んだのは、猥雑で機知あふれる町ナポリ。ルネサンスの花を咲かせたコジモ・メディッチのフィレンツェ、『ピエタ』や『最後の審判』を残し、八十九歳で苦悩と労働の生涯を終えたミケランジェロのローマ。その後も、国王ヴィットリオ・アメデーオ統治下のトリーノ、カノーヴァが乱交にふけった祝祭都市ヴェネツィア、ジュゼッペ・ヴェルディとスカラ座の町ミラノへと続く。イタリア漫遊のガイドブックとして、これ以上に高尚で手のこんだ書が存在するだろうか。」


 あとがきから抜粋。次は、『物語 イタリアの歴史』順序が逆であったが。