フランシス・フクヤマ「歴史の終わり(上)」その3 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「人類が千年王国の終わりに近づくにつれ、独裁主義も社会主義的中央政府の計画経済も、ともに似たような危機に見舞われ、普遍的な有効性を秘めたイデオロギーとしての戦いのリングに立つ競技者はただ一人を残すのみとなった。リベラルな民主主義、すなわち個人の自由と人民主権の教義こそがそれである。フランスとアメリカでの革命の起爆剤として登場して以来二百年、この自由と平等の原則は歴史の荒波に耐えうるだけでなく、幾度でもよみがえる力があることを自ら証明してきたのである。」


「自由主義と民主主義は密接に結びついているが、概念としては別物である。政治的自由主義とは、簡単にいえば、確固たる個人的権利、あるいは政府支配からの自由を認めた法原則のことである。」


「基本的人権についての定義は実にさまざまだが、ここでは民主主義に関するプライス卿の古典的労作の中の定義ののっとることにする。その著書では、人間の基本権を次の三つに限定している。第一は公民権、つまり『各自の人格や財産について社会から支配を受けないこと』。第二は宗教権、つまり『宗教上の見解の表現や信仰の実践に際して支配を受けないこと』。第三に挙げているのは政治権、すなわち『管理統制もやむなしとするほど公共の福祉に明白な影響を与えたりしないことがらについては、支配を受けないこと』であり、これには出版の自由という基本的権利が含まれている。」


 ジェームズ・ブライスJames Bryce, 1838年 5月10日 - 1922年 1月22日 )はイギリス 法学者 歴史学者 政治家 。「地方自治は民主主義の学校である」という言葉で有名。