福澤諭吉「福翁自伝」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「とにかく当時緒方の学生は、十中の七、八、目的なしに苦学した者であるがその目的のなかったのがかえって幸せで、江戸の学生よりもよく勉強ができたのであろう。それから考えてみると、今日の学生にしても学問を勉強すると同時に始終わが身の行く先ばかり考えているようでは、修業はできないだろうと思う。」


「だからといって、ただうかつに本ばかり見ているのは最もよろしくない。よろしくないが、また始終今も言った通り自分の身の行く末のみ考えて、どうしたらば出世ができるだろうか、どうしたら金が手に入るだろうか、立派な家に住むことができるだろうか、どうすればうまい物を食いよい着物を着られるだろうか、というようなことにばかり心を引かれて、あくせく勉強するということでは、けっして真の勉強はできないだろうと思う。就学して勉強している間はおのずから静かにしていなければならない、という理屈がここから出てくるだろうと思う。」


 齋藤孝の現代語訳だが、この部分は原文とほぼ同じ。第4編の『緒方の塾風』はかつてよく読んだ。