無邪気な戦争 | 小人閑居

無邪気な戦争

イラク戦争でたくさん人が死んでいる。

大量破壊兵器なんて無いことはわかっていたはずだ。わかっていなければ、それはアメリカやイギリスの諜報機関の無能さの証明だし、わかっていたのに戦争を始めたとすれば、ブッシュやブレアは嘘をついていたことになる。政治家の嘘は許されない。

フセインがアル・カイダなどのテロリストグループとつながりが無かったことははっきりしていたはずだ。フセイン自身が「もし、これらのテログループと自分がつながりを持っていたら、誇りを持ってそのことを宣言する。しかし残念ながら、つながりは無い」と声明を発表していた。フセインはうそつきだが、このちょっと笑っちゃうような声明にはたぶん嘘は無いだろう。その後もそのつながりは証明されていない。

イラクが45分で主要国に対して攻撃ができる、なんていうのだって、今になって嘘だとわかっている。では、このクレームは正確ではないと言ったために、渦中の人となり、政治家に利用され、自殺に追い込まれたドクター・ケリーは、いったい何のためにそこまで追い詰められなければいけなかったんだろう。誰かのうそを守るため? 何のために? 戦争を始めるために?

イラクの市民もたくさん死んでいる。この数は、「戦争に伴う避けられない犠牲者」といってもいいのだろうか。フセインは極悪の独裁者といってもいいだろう。でも、そのフセインがいなくなった後の自分たちの国の状況は残された家族を慰めるのだろうか。

死んでいった兵隊たちは? 正しい目的のために行われた戦争ならともかく、目的が正しくない、国際連合でも認められず、国際法的にも違法な戦争で死んでいった兵隊たちの家族は? 何が彼らを慰めるのだろう。何よりも切ないのは、死んで行くほとんどの兵隊たちが若く、貧しいことだ。そして、貧しい海外からの移住者も、アメリカの市民権獲得を夢見て、兵隊になり、イラクで戦っている。でも、金持ちは戦争では死なない。

目的はフセインを取り除くことだといっても、そのフセインを独裁者に据えたのは、アメリカ自身だということを都合よく忘れてしまっている。その無邪気さが怖いと思う。