片山さんの子どものような瑞々しい感性に圧倒される幼児絵本。子どもが読んだらするんと受け入れちゃうのかもしれないけど、大人がこれを読むとその感性の鋭さにひたすら敬服してしまう。

『おつきさま こっちむいて』
片山令子:文 片山健:絵 福音館書店(2009年)

雲間から顔を出したお月さまに、“くもで かおを あらったみたいに ぴかぴかだね!”と言ったり、電線のシルエットの上を滑るように動くお月さまに“こんやは でんせんの つなわたりだね。”と書いたり。こんなピュアな言葉がスルスルっと出てくる片山令子さん。少なくとも自分には到底ムリだろう。この感性が僕もほしい!

また考えてみればお月さまに顔があるわけでもなく、したがって“こっち”も“あっち”もないはずなんだけど、幼い男の子にはお月さまが“こっち”を向いてくれてるかどうか、判るんだろうね。お月さまこっち向いて、と呼びかける。お月さまはこの子にとって友達なのだ。


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大人はこういう話を聞くとつい“大人にはわからない子どもならではの感性”だの“子どもだけに見えている世界”だのとまとめて理解しようとしちゃうんだけど、たぶん大人だって本当に子どものような純真さを取り戻せればお月さまの顔の向きだってわかるようになるのだろうと思いたい。自分もわからないのでそれがわかったらいいだろうなと。