終戦の日まであと3日。戦争の絵本あと三冊の予定です。去年も紹介した本ですが繰り返しで。

『タケノコごはん』 
大島渚:文 伊藤秀男:絵 ポプラ社(2015年)

映画監督の故・大島渚の小学生時代の作文を基に遺族が書き起こしたお話。日本が中国と戦争をしていた時代、パパ(大島渚)の友だちのさかいくんは体もがっしりしていて腕っぷしも強く、ひ弱だったパパの力強い味方だった。

そのさかいくんのお父さんがやがて兵隊として戦地に赴き、そしてある日、さかいくんは学校で先生に呼び出されて「名誉の戦死」を聞かされる。でもお父さんの葬儀でさかいくんは唇をぐっとかみしめ涙は見せません。

やがて担任の先生も戦地に向かい、代わりに色白の先生がやってきます。みんなはすっかりこの色白の先生になついて、しあわせな時間が流れる。しかし今度はその色白の先生にも召集令状が。先生を見送ろうとみんなは先生の家へ。「お祝い」だからと、でも戦時下で食べ物の乏しい時代、家族は子供たちをタケノコごはんでもてなす。そんな中さかいくんの様子が…

さかいくんは、悔しいのね。僕にはこの場面、描かれている絵以上に目に浮かんで迫ってくる。先生が、大好きな先生まで、兵隊にとられて。悔しさと怒りと悲しさで、顔を真っ赤にしながらもう狂ったようにタケノコごはんをかっこみ、涙とごはんつぶでぐちゃぐちゃになった顔で目に大粒の涙をためて、

「先生、戦争なんかいくなよっ」

…次のページ。言葉はない。先生は、何も言わず、しかし目を真っすぐに向けて。

「無言」は、ときに多弁以上に多くの言葉を語り掛ける。それを体感してほしい。きっと先生には、それこそ百万の言葉を費やしても語りつくせない思いがこみ上げていたはず。それがあっての無言なのだ。伊藤秀男さんの絵はとくに“目”の力強さが秀逸で、この場面、その厳しさや苦しさを思うと(なにより我々はその後の歴史を知っているだけに)正視できないほど。

戦争の愚かさ、むごたらしさ、そして、そんな戦争をかつての日本はおこなっていたんだという事実を、目を背けないでしっかり見ていただきたいと思います。


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