この春から新たに社会人になるような若者にぜひオススメしたい感動作を。3部作なので順に紹介していきます。まずは第1作を。

じつはリスに見えてリスではない、作者オリジナルの小動物らしい。その正体はずっと後になって明かされるんだけど・・・

『小さなピスケの はじめての旅』
 二木真希子:作  復刊ドットコム(2018年)

森に暮らすピスケはある日、そろそろ一人前になったからと両親に別れを告げ、自分の住む場所と家を求めて旅に出る。森や草原を何日も歩いて、やがて大きな町に着くが、ピスケの暮らせる町ではなかった。嵐にあい、川に流され、ずぶ濡れになったピスケはそこで大きな木の下に誰も住んでいない廃屋を見つけ──

これは大人として一人立ちしていく成長物語。自分の居場所、生きるべき場所を見つける旅とは、人生そのものと言えるが、親元で育ってきた子どもが一人前になって自分で自分の道を切り拓いていく過程でもある。最後に安住の地を得たピスケの表情がいい。

作者はあの上橋菜穂子の『守り人』シリーズの挿絵を描いた二木真希子さん。かつてはジブリのスタジオにいたらしい。ジル・バークレムののばらの村シリーズの絵を彷彿とさせるスタイルの絵は僕好みで大好き。リアルな生活感を見せる絵が、わが家を求めるピスケの旅とうまくマッチしている。