さて、このような不動産抵当債権担保貸出し金の証券化の盛行は、次第に次のような考え方を生んでくるのは当然である。もし何らかの形で定期的に安定的に元利金または現金流入が行なわれるような銀行貸付金債権が存在すれば、これらを銀行貸借対照表から引き抜いて、信託をするなり金融子会社へ引き渡し、その債権を細分化した証券に変換・分割化して売却できないかということである。かくして「証券化できない金融取引というものは存在しないLといわれるほど証券化は次第に全金融取引領域へ及んでくることとなった。

不動産ほど確固とした担保ではないにせよ(もっとも、米国ではテキサス、ジョージア、ワシントン、オクラホマ各州にみられるとおり、土地といえども購入価格以下に暴落することが充分ありうる国柄である。日本のように半永久的に地価が上昇を続ける国というのはきわめて稀有な例として国際的に考えられている点は銘記すべきである)、自動車ローン、クレジ″トーカード債権、機械・コンピュータ・設備、はては通信衛星のリース料金までが証券化された。

打込氏によればオート・ローンはCARSと略称され、八五年投資銀行の雄、ソロモン・ブラザーズがマーケティング・アシスタンス社のための私募債1000万ドルの発行を、同年、マリン・ミドランド銀行が公募6000万ドルを発行したのを皮切りに、八六年末ではゼネラル・モーターズの金融子会社GMAC社(同社は三〇〇億ドルものCP発行体で、全米のCP発行市場の一割を握っている金融大会社である)はすでに三八億ドルものCARSを発行している。