10月に入って数日 まだまだ夏の余韻が強く残る暑い日の夜 バイトに行く息子くんを送り出し レストランを予約して 友達と食事に行くという娘ちゃんも見送ると家の中には私1人

自分のご飯なんてどうでもいいや
晩酌しよっかな 

おっさんが約束した日についに出てってくれた


あの部屋を片付けなきゃ

いらない物は遠慮なく置いて行きよった

片付けは今年中には済ませたいな



前日 朝早くにLINEが来た
迷惑かけてごめん 鍵はポストに入れた 
子供達にも謝っといて と

幸せ祈ってます なんて返信した

これがたぶん 最期のLINEになる


もっと やったー出てったーってなるかと思ってたんだけど・・・
虚しい・・・
淋しい訳じゃ無い ましてや未練など1ミリも無い

でも・・・何とも言えず虚しい

私は・・・20数年 何を守ってきたんだろう


何故か 泣ける もっと晴れやかな気分になる予定だったのに

息子くんが言う

「自分で追い出しといて 何で泣いてるの?笑」


その通りだ 何で泣いてるんだろ?

淋しくはないよ・・・多分

でも でも 泣けるんだ





前日から理由がわからない涙がよく出た

泣いてるんじゃ無いよ 涙がでるだけ


家で1人になった私は 誰にも遠慮なく泣ける

明日はもう涙なんか流さない

でも 今だけ 今だけ我慢しないでとりあえず泣いとこ・・・相変わらず理由はよくわからんけどスッキリするかも・・・


布団の上に寝転んで肘をつく姿勢でそんな事を思ってた




体勢が悪かったみたい 左腕が痺れてビリビリ・・・ちょっと体勢変えよう・・


・・あれ?


動かない あれ? あれれ?


やらかした! そう思った


何が起きてるかは把握できた


どうしよう?1人じゃん


母に電話だ


幸いすぐ出てくれた


「助けて 左が動かない」

とりあえず自分の身に起きてる緊急事態は伝えられた


「私が行くより早いから救急車を呼んで」

・・・そっか こういう時に救急車って呼ぶんだ

思いつきもしなかったよ


どんどん左半身が動かなくなっていく


それでも何とか救急車も呼べた


後は・・・バイト中の息子くんは電話しても出れないだろう

娘ちゃんに連絡しとこう

食事中かな ごめんよ


娘ちゃんもすぐ出てくれた

「ごめんね 身体が変なんだ 救急車呼んだよ

迷惑かけるかもだけど頼むね」


不安そうな娘ちゃんの声 ごめんよ


さて どうやって玄関まで行こうか?

左側はもはやピクリともしない

這っていくしか無さそう

裸足だよ 靴下欲しいな


少し上にある靴下の入った引き出しが上手く開けれない もどかしい・・

よしっ 靴下も掴めた 

このまま持って玄関まで行こう カバンも持って行こう 保険証入ってるし  

あとは玄関まで行くだけ


狭い家です 玄関見えてるんです でも今日は遠い 見えてるのよ すぐそこなのよ なのに・・


這っていくというより もがいてもがいて玄関マットくちゃくちゃにしてとりあえずたどり着いた


そうこうしてるとチャイムが鳴った

来てくれたんだ

ホッとした

鍵開けなくちゃ

手を伸ばしてもあと少しがなかなか 上手く開けれない 


ガチャ やっと開けれた


すぐに扉が開いた 外から救急隊の人が声をかけてくれる

タンカに乗せてもらってからはあっという間に救急車の中に そいえば握りしめてた靴下どっか行っちゃった まぁいっか


娘ちゃんが心配そうに覗き込んで「ママ」と声をかけてくれる

ごめんよ 帰って来てくれたんだね


救急隊の方が頭痛や吐き気はしないかと頻繁に聞いてくれる


近くの病院は断られたみたい どうなるんだろう


娘ちゃんは未成年 息子くんは成人してる

成人してる息子くんに来て欲しいみたい

でもバイト中なのよ

息子くんのバイト先はすぐそこ うちの隣りの飲食店

電話するより早いからと救急隊の方が走って行ってくれた

びっくりするだろうな 息子くんはもちろん お店の方も


すぐに息子くんが来た 当然ユニホームのまま

親子3人初の救急車

お店の皆さん 息子くん

ごめんなさい


すぐに救急車がサイレンを鳴らして走り出した




この後 4ヶ月帰れないなんてこの時は考えて無かった