SOSの出し方が下手だ。というか、助けを求めるという行動は私にとってレベルが高すぎる。そのせいか、誰かに助けを求めようと決心するタイミングがあんまり来ない。

 人を頼るくらいなら自分で何とかする。何とかしなくちゃいけない。自分の痛みを関係のない他人に背負わせていい理由がない。カミソリをぐっと滑らせて目が覚める。死に損ねる朝ばかり。

 死んだ方がマシなんて考え飽きた。別に人と仲良くお喋りしたい訳じゃない。笑ったり一緒にいたりしなくてもいい。なのに息を吸って吐くのがこんなにも難しい。あとは何を捨てれば楽になるって指を折って真剣に考える。


 人が怒っているとき、相手が喋り終わるまで手に爪の跡をつける癖がある。溢れそうになる言葉を殺しながらじっと待つ。ふと我に返ると三日月みたいな跡が無数に浮かんでいる。布団に潜りながら、もう誰も喧嘩しませんようにって疲れて眠るまで三日月に祈る。明日は今日よりもちょっとだけ強い自分になっている。たすけてを静かに食べてすくすくと育つ。


 昨日の晩、いつもより丁寧にリンスをしたから、黒髪には天使の輪を模したキューティクルが浮かんでる。照れくさくて前髪をパラパラと乱す。お父さんがいなくなって四年。ふと、Googleマップに天国と打つ。その日が来たら、似合ってると言ってくれた白いワンピースを死装束にそっちまで行く。元気で。