ふるさとの味が学生の心を癒す!新居浜市の「ふるさとにいはま便」が仕掛ける温かな故郷愛

大学生活、楽しいけれど時にはふるさとが恋しくなる。そんな時、突然届く故郷からの贈り物。

 

 

が仕掛ける「ふるさとにいはま便」が、市外に進学した学生たちの心を温かく包み込んでいます。地元の味と想いが詰まった箱の中身とは?そして、この取り組みが秘める深い意味とは?新居浜市が描く未来への布石を紐解いていきましょう。

 

愛媛県新居浜市が展開する「ふるさとにいはま便」は、物価高騰の影響を受けている市外の大学や専門学校に進学した地元出身の1年生を支援する取り組みです。2022年度からスタートしたこのプロジェクトは、地元の味や特産品を詰め合わせた3000円相当の品々を、申し込みのあった学生たちに無料で届けるというもの。単なる物資支援にとどまらず、故郷との絆を深め、将来的なUターン促進を狙う新居浜市の熱い想いが込められています。

1. 「ふるさとにいはま便」の中身と想い

「ふるさとにいはま便」の箱を開けると、そこには新居浜の魅力が詰まっています。地元12の事業者が手がけた焼き肉のたれや菓子など、9品目もの特産品が学生たちを出迎えます。これらの品々は、まるで新居浜の風景や思い出を包み込んだタイムカプセルのよう。

 

例えば、箱の中に入っている「太鼓祭りせんべい」。新居浜市の伝統行事である太鼓祭りをモチーフにしたこのお菓子は、カリカリとした食感と共に、祭りの熱気や鼓動を思い出させてくれるはず。また、地元の製麺所が作る「別子そうめん」は、かつて新居浜の経済を支えた別子銅山にちなんで名付けられた逸品。これらの品々は、単なる食べ物以上の意味を持っているのです。

 

新居浜市シティプロモーション推進課の吉岡奈津子課長は、「ここで皆さんと繋がりをつくりまして、ぜひ新居浜にUターンして頂きたい、新居浜を盛り上げて頂きたい」と語っています。この言葉からも、「ふるさとにいはま便」が単なる物資支援ではなく、将来的な人材確保や地域活性化を見据えた戦略的な取り組みであることがわかります。

2. 地域を巻き込む「ふるさとにいはま便」の制作過程

「ふるさとにいはま便」の魅力は、その中身だけではありません。制作過程にも新居浜市の温かさが詰まっているのです。箱詰め作業は、地元の障害者福祉サービス事業所で行われています。これは、単に効率的な作業を行うだけでなく、地域全体で学生たちを支援する姿勢の表れと言えるでしょう。

 

想像してみてください。障害を持つ方々が丁寧に箱詰めをする様子を。彼らの手から手へと渡される新居浜の特産品。そこには、きっと「頑張れ」という無言のエールが込められているはずです。この作業は、箱詰めという単純な作業以上の意味を持っています。地域の多様な人々が協力して作り上げる「ふるさとにいはま便」は、新居浜市の団結力と包容力を体現しているのです。

 

さらに、地元12の事業者が商品を提供していることも注目に値します。これは地域経済の活性化にもつながる取り組みと言えるでしょう。学生支援と地域経済の振興を同時に達成する、まさに一石二鳥の施策なのです。

3. 「ふるさとにいはま便」が目指す未来

「ふるさとにいはま便」は、単に学生を支援するだけの取り組みではありません。この施策の背後には、新居浜市の未来を見据えた深い戦略があります。その核心は、「関係人口」の創出と維持にあります。

 

「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のこと。「ふるさとにいはま便」は、市外に出た学生たちとの絆を維持し、彼らを「関係人口」として育てていく試みなのです。

 

例えるなら、「ふるさとにいはま便」は新居浜市が学生たちに送る「ラブレター」のようなもの。遠く離れた場所にいても、故郷を想い、つながりを感じてもらうための仕掛けです。将来的には、この「ラブレター」が実を結び、Uターン就職や地域貢献につながることを期待しているのです。

 

実際、似たような取り組みを行っている他の自治体では、一定の成果が出ています。例えば、島根県邑南町の「まるごと定住促進課」は、都市部の大学生にふるさと便を送る「つながるパック」事業を展開。この取り組みにより、Uターン率が向上し、若者の地域活動参加も増加したという実績があります。

4. 「ふるさとにいはま便」が示す地方創生の新たな可能性

「ふるさとにいはま便」の取り組みは、地方創生の新たな可能性を示しています。従来の地方創生策は、企業誘致や観光振興など、外部からの資源導入に重点を置くものが多かったのです。しかし、「ふるさとにいはま便」は、既存の「人財」との絆を深めることで、持続可能な地域づくりを目指しています。

 

これは、まるで庭師が植物を育てるようなアプローチです。新しい種をまくだけでなく、既に芽吹いた若木に水やりを続け、大切に育てていく。そうすることで、やがては立派な森を作り上げるのです。「ふるさとにいはま便」は、新居浜市出身の学生たちという「若木」に、故郷の味という「水」を与え続ける取り組みと言えるでしょう。

 

さらに、この取り組みは SDGs(持続可能な開発目標)の理念とも合致しています。特に「住み続けられるまちづくりを」という目標11に深く関連しています。地域の特性を活かしながら、持続可能な形で人々のつながりを維持していく。これこそが、真の意味での地方創生ではないでしょうか。

まとめ

「ふるさとにいはま便」は、単なる物資支援を超えた、新居浜市の未来への投資です。地元の味と想いを詰め込んだ箱は、学生たちの心に故郷の温もりを届けるだけでなく、将来的な人材確保や地域活性化の種を蒔いています。地域全体を巻き込んだ制作過程は、新居浜市の団結力と包容力を体現し、「関係人口」の創出・維持を通じて、持続可能な地域づくりの新たな可能性を示しています。

 

この取り組みは、地方創生の新しいモデルとなる可能性を秘めています。故郷との絆を大切にし、地域の特性を活かしながら未来を創造していく。それは、まさに「ふるさと」の本質的な価値を再発見し、活用する試みと言えるでしょう。「ふるさとにいはま便」が届ける味と想いが、やがて大きな実を結ぶことを、私たちは心から期待しています。