大学3年の時だった。


当時付き合って いた男性とは
遠距離恋愛を3年続けていた。

激しい感情の起伏もなく、
良い意味で安定
悪くいうと退屈
していたんだと思う。

彼は決して容姿が良いわけではなかった。
むしろ、失礼だけれども
不細工な方の部類に入ると思う。

でも私は彼が好きだった。
まだお互い学生だったが
彼はお金の無い中、バイトに勤しみ、
私が会いに行く週末は、毎回レンタカーをかりて
色々な所へ連れていってくれた 。
私をとても愛してくれていて、
遠距離恋愛中でもマメに連絡をくれたり、
愛情表現をたくさんしてくれる人だった。



私は彼が好きだった
と書いたが、

私は“私を好きな”彼が好きだった
のだと、今になって思う。

自分は愛されているという
相当なおごりと、
自信が自分にはあったのだろう。


そんな日々を送っている中で



ある男性に出会った。



場所は知人に紹介してもらった美容室だった。
そこは地元でも大きなチェーン展開をしている店舗で、
何十人もスタッフを抱えているお店だった。

お店に入ると

すぐにその男性が目に入った。



(かっこいい人)
それが第一印象だった。

無精髭を生やして、帽子をかぶった美容師さんだった。
お客さんもスタッフもたくさんいる中で、

一番に目が入った。


受付の女性が
いらっしゃいませ
今日はどうされますか?
担当のご希望はありますか?
耳に入っていくが
言葉が頭に入らなかった。


初めてのお店だったので担当は指名しなかったが、
当然彼になるはずもなく

斜め後ろでお客様のセットをする彼を
ちらちらと鏡越しに見るのが
精一杯だった。


これは私の人生の中で

最初で最後の一目惚れだった。

この出会いが、
後に10年以上経った今でも
忘れられない出会いになるなど

この時は思いもよらない。