手の届かない高嶺の花。
ほんっと乗りたかった
他の子が乗ってるのをただ、
ただ横目で見ていた。
もちろん親が買ってくれることは絶対にない。
憧れの存在だった。
そんなシャチ君。
トライアルで、なんと1200円!!
当然ながら嫁は猛反対。
嫁
浮き輪でいいでしょ!
シャチなんて一瞬しか使わない!
邪魔になるだけ!
まずは息子に新しい浮き輪を買ってよ!!
嫁よ。
我々の目の前にあるのはあのシャチ君だぞ?
邪魔!??
邪悪な魔物。略して邪魔!?
神聖なるシャチ君に!?
邪魔だとぉ!!
いつから心まで貧乏になってしまったんだ。
少女のキラキラした瞳を失ってしまったのはいつからだ?
嫁よ、外に出ろ!!!
塩だ!!塩をまけー!!
嫁の四角に塩を盛り、塩をまいて清めるんじゃーーー!!!
こやつは魔物に取り憑かれとるんじゃぁ。
シャーマンを呼べー!
と言えるはずもなく、
子供達のキラキラ輝く瞳を横目に、下唇を強く噛み締めてお店を出る。
「君も他の大人と一緒なんだね。
ぼくはただ子供達を背中に乗せてプカプカ泳ぎたいだけなんだ。
ただ、それだけなんだよ。
君の子供達もぼくをキラキラした目で見てくれていたよ。」
シャチ君。
やめてくれ。
もう、もうしゃべらないでくれ。
おれはもう振り返らないと決めたんだ。
気づいたときには、
噛み締めた下唇から血がしたたり
涙と混ざり床に落ちていた。
それでも、
魔王嫁には逆らえないのだ。
そして、
翌日。
魔王様とゆめタウンに。
スポーツ用品のゼビオに行くと、
そこで運命的な出会いが!!!
シャチ君ー!!!!
なんと、
空気を入れられて、
パンパンの状態で展示されている。
しかも、
展示品全品半額!!!!!
シャチ君600円!!
ラーメンとシャチ君が同じ値段だと!!!?
神様、命の重みってなんですか?
価値って何ですか??
当然隣の魔王様は、
いりません!!
うちにあっても邪魔です!
とのこと。
しょうがなくゼビオで空気入れとか見てたら、魔王様は新たな戦闘服を買いに他のお店を巡るとのこと。
魔王はいない。
今この空間に、
娘と二人きり。
壁に吊るされて、
見世物にされているシャチ君。
吊るし刑から救えるのは巨人と娘しかいない!!
何のためのガタイだ!
187cmの巨人なら、
吊るされているシャチ君に手が届く!!
魔王の恐怖にガクガク震えるヒザと手。
恐怖の海に沈みかけた中、
一筋の光が見える。
隣で娘が純粋に輝く瞳でシャチ君を見つめてる。
その眼差しが光り輝く1本の道となっている。
その道を頼りに巨人の手がシャチ君にたどり着いた。
おれはこの瞳を守るために生きているんだ。
羨ましがって終わった少年時代。
同じ過ちを繰り返してはいけない
巨人がこの負のスパイラルを止めるんだー!
気がついた時にはシャチ君を吊るし刑から外し、
無我夢中で走った。
今しかない。
魔王のいない今しかチャンスはない。
運良くレジに到着してお会計。
無事シャチ君を救った。
忘れないさ。
レジのあとに娘と交わしたハイタッチ。
その後、魔王様降臨。
既に魔王様になすすべはない。
展示品なので、
返品と言う悪魔の魔法も使えない
これぞ完全勝利。
そして、
シャチ君を買ってことを知った息子が泣き出した。
巨人
ど、どうした??
そんなにシャチ君欲しかったのか??
娘
シャチ買って良かったね!!
と言いながら、
息子の頭をなでなで。
瞬時に息子が手を払いのけて
叫ぶ!
息子
シャチなんていらない!!
欲しくない!!
えっ…
えぇ~~~(゚Д゚)
息子
シャチ買ったから、もう僕の浮き輪買ってくれないんでしょ!!!
可愛い息子だ。
安心しろ。
君には巨大な魔王様がついているから大丈夫だ。
と言うことで、
本日は浮き輪探しです。