最高裁令和5年12月12日判決(判例タイムズ1519号など)

 

 

本件は、買収による有罪判決が確定したため、被上告人(元市議会議員)の当選が公職選挙法251条の規定により無効となり、被上告人は遡って市会議員の職を失ったなどとして、上告人(市)が、本件議員報酬等相当額及び本件政務活動費相当額の不当利得の返還等を求め、被上告人は、その各相当額と同額の不当利得返還請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張するなどして、上告人の請求を争ったという事案です。

 

 

原審は、政務活動費の交付は遡ってその法律上の原因を欠くこととなるから、上告人は本件会派の唯一の所属議員であった被上告人に対し本件政務活動費相当額の不当利得返還請求権を有するとしたものの、有罪判決が確定する前に、本件政務活動費の一部を大阪市会政務活動費の交付に関する条例で定められた経費の範囲で使用して相応の調査研究等を行ったことによって市は利益を受けたとして、相殺の抗弁を一部認めて、上告人の不当利得返還請求を相殺後の残額の限度で認容すべきものとしました。

 

 

これに対して、最高裁は、当該条例に基づき交付される政務活動費は、市会議員の調査研究その他の活動に資するために必要な経費の助成として交付されるものであって、同条例5条所定の政務活動の対価として交付されるものとはいえず、公職選挙法251条の規定により遡って市会議員の職を失った当選人を唯一の所属議員とする会派が政務活動を行っていたからといって、その活動により上告人(市)が利益を受けたと評価することはできないとして、その対価性を否定し、相殺の抗弁を一部認めた原審の判断を覆しています。

 

 

また、議員報酬についても、市は、市会議員として相応の活動を行ったことによる利益を受けたとして相殺の抗弁を一部認めたロ原審の判断に対して、 議員の選挙における当選人がその選挙に関し公職選挙法251条所定の罪を犯して刑に処せられた場合には、当該当選人は、自ら民主主義の根幹を成す公職選挙の公明、適正を著しく害したものというべきであり、同条は、このような点に鑑み、上記の場合における当選の効力を遡って失わせることとしているものと解される。このことからすれば、同条の規定により遡って市会議員の職を失った当選人が市会議員として活動を行っていたとしても、それは上告人との関係で価値を有しないものと評価せざるを得ないとして、否定しています。

 

 

 

当選無効なら国会議員歳費返還 公明、法改正めざす方針 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)