山口県が貴賓車にトヨタの最高級車「センチュリー」を購入したのは違法な公金支出だとして、元県職員が購入費を知事に請求するよう県に求めた住民訴訟について、最高裁第3小法廷(渡辺恵理子裁判長)は4日付で、元職員側の上告を退ける決定をした。購入を適法と判断し、県側の逆転勝訴とした二審広島高裁判決が確定した。

(10月6日時事ドットコムニュースから一部引用)

 

県の判断を違法とした第一審判決については次の通り紹介したことがあります。

 

県の所有する貴賓車(センチュリー)の購入契約の締結が違法とされた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

控訴審判決(広島高裁令和5年5月10日判決)は次の通り説示して判断を覆しており、今回最高裁もその判断を是認したということになります。

・本件センチュリーは、それまで副議長用公用車として使用されていた県所有のセンチュリー(平成19年登録のもの)が更新時期を迎えることとなったことに伴い、その更新のために購入されることとなったものである。そして、県では、過去にも皇室や外国の要人が来県したときにおける貴賓用の車両としてセンチュリーが長年使用されてきたものであり、同車両を貴賓用の移動用車両として使用することは、その車両の高級さも相まって、品格、実績及び安全性を備えた車両をその送迎に供するものとして、皇室や外国の要人に対し、県として最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期するものであったということができる。しかも、本件売買契約締結当時は、東京オリンピック・パラリンピックの開催等も控え、皇室のみならず外国の要人の来県も見込まれる時期であった。本件センチュリーの購入は、こうした目的の下でされたものと認めることができ、事実、その後新型コロナウイルス感染症の流行に伴う海外との交流途絶の時期こそ経たものの、その中でも本件センチュリーは貴賓対応に使用されてきたところである。こうした点に照らすと、本件売買契約を締結した目的は相当なものと認められる。

 

・県においてセンチュリーを皇室や外国要人の来賓用車両として長年使用してきたという実績があったこと等に鑑みれば、貴賓に県としての最大限の敬意を示し、その安心安全、確実な送迎を期する観点より同車両を来賓用車両として選定することとしたとしても、その判断にはなお相応の合理性を認めることができ、この点は、宮内庁が皇室の来県に際して取り立ててセンチュリーを移動用車両として配備することを求めているとまでは認められないことや、他の地方公共団体においてセンチュリー以外の高級国産車を知事、議長用、来賓対応の移動用車両として用いている例があることによっても左右されるものではない。また、これら貴賓の移動用車両として、上記の観点から、安全面やセキュリティ面での懸念の残るハイヤーやレンタカーで対応することとせず、県が所有し管理する車両をもって充てることとしたとしても、その判断にも相応の合理性を認めることはでき、かかる認定判断は、他の地方公共団体においてリースやハイヤー等で対応している例があることによっても左右されるものではない。

 

・県は、行財政改革の一環として、いわゆる黒塗車の削減に取り組んでおり、副議長用の公用車としてのセンチュリー(平成19年登録のもの)が更新基準を満たして更新時期を迎えたことに伴い、貴賓車として位置付けられていたセンチュリー(平成14年登録のもの)を含め、3台にわたるセンチュリーについても漸進的削減を目指すこととし、県議会事務局が管理していたセンチュリー計2台を、同事務局の了解を得て物品管理課に移管し、これらについて同課による一元管理を企図するとともに、その可能な限りの削減を図り、他方で、来賓対応のない期間においては、遊休車両としないとの見地から県議会事務局に貸し出して議長や副議長の送迎車としてその使用を許すこととしたものであり、本件売買契約の締結による本件センチュリーへの更新は、こうした見直し案の一環としてされたものと認められる。こうした見直し案の内容は、センチュリーの貴賓対応による稼働率が現実問題として高くなく、その効率的運用を図る必要がある一方、その当時、県には県議会事務局管理下のセンチュリー各1台が既に存在し、これが議長及び副議長の公用車として現に各使用されていたという現状があったことをも踏まえ、こうした現状に大きな変更を加えず、県議会事務局側の了承の得やすい内容でありながら貴賓車としての稼働も期し、県全体として取り組んでいた黒塗車の削減にも資するという、現状及び県全体の目的に適合的な案であったということができ、相応の合理性を有するものであったと評価することができる。