判例時報2541号で紹介された裁判例です(東京家裁令和4年7月7日判決)。

 

 

本件は,婚姻し,日本で暮らしていた夫婦の離婚訴訟ですが,関係が険悪となり,妻(日本人)が夫(フランス人)が出社している間に,子どもを連れて別居が開始され,妻が夫に対し,子どもの親権者を自らに指定した上での離婚等を求めたというものです。

なお,別居以来,以来夫と子供の面会交流が全く実施されていません。

 

 

本件の特徴としては,フランスの裁判所が「監督責任を持つ者からの子供の略奪及びフランス国外での拘束」などの罪で妻について逮捕状を発布し国際指名手配したことやマスコミで大きく取り上げられたりしてことが上げられます。

 

 

判決では,現に妻が子どもを養育監護しており,その監護状況に問題はみられないことから,離婚を認めた上で子どもの親権者を妻と定めました。

妻に対するフランス裁判所からの逮捕状の発布という事情については,現に妻が逮捕されておらず子どもの監護に問題が生じていない以上は,逮捕状の発布という一事のみで立たぢに親権者として不適格とまではいえないとしています。

 

 

ただ,別居以来,以来夫と子供の面会交流が全く実施されていないことについて,妻が夫と子どもとの面会交流を妨げていることは問題と言わざるを得ないとしつつ,共同親権を認めていない現行法の下では,双方が協議をして,整わないときは調停審判を経るなどして面会交流を実現していくのが相当であるとしています。

 

 

個人の意見としては,面会交流がきちんと実施できていない理由や事情については様々あるとは思うので一概には言えないとしても,面会交流が妨げられているような場合には親権者の判断にも影響するような判断枠組みを確立していかないと,子どもと会えない方の親にとってはあまりに酷なのではないかと感じています。