判例タイムズ1491号で紹介された裁判例です(東京地裁令和2年1月31日判決)。

 

 

本件はいわゆる地面師の事案で,土地の所有者を自称するAから中間の買主Bに対して売買契約による所有権移転登記がなされ(前件登記),さらに,Bから本件原告に対して売買による移転登記(後件登記)がされるいう流れにおいて,ふたつの登記が同時になされるという場合に(連件登記申請),原告から後件登記についてのみ依頼を受けた司法書士が,前件登記の書類の確認を怠ったして訴えられたという事案です。

 

 

判決では,登記申請手続が連件登記申請の方法により行われる場合において,前件の登記申請手続を代理する別の司法書士がいるときは,後件の登記申請手続を代理する司法書士は,原則として,前件の登記申請手続書類について必要な書類が揃っているか否かを形式的に確認するという契約上ないしは信義則上の義務を負うにとどまるが,前件の登記申請手続を代理した司法書士がその態度等からおよそ司法書士としての職務上の注意義務を果たしていないことを疑うべき事情があるなど,特段の事情がある場合については,例外的に,前件の登記申請手続書類の真否等について調査確認すべき契約上ないしは信義則上の義務を負うと解するのが相当であるとしたうえで,前件登記の申請手続を代理する司法書士が決済の数日前に決まった点については,種々の理由から決済の直前に司法書士が変更になることも想定できるものであるため,この点のみをもってその司法書士に何らかの不審な事情があるとまではいえないず,また,被告司法書士は,前件の委任を受けた司法書士について有意な事前情報を有していたものではない上,その司法書士は,決済当日に立ち会っていなかったとはいえ,決済前日には登記義務者の本人確認を行った旨を被告事務所の電話で伝えているのであるから,これらの事情から前件の委任を受けた司法書士が司法書士としての職務上の注意義務を果たしていないことを疑うのは困難であるとして,その他の原告の主張についも否定し,本件の司法書士が注意義務を果たしていないといえるだけの特段の事情を否定しています。

 

 

なお,このような連件登記申請における司法書士の注意義務の点については本判決後に最高裁による判断が下されています。

 


司法書士、依頼外で責任も 最高裁が不動産登記で判断 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)