判例時報2500号で紹介された事例です(名古屋高裁金沢支部令和2年9月30日判決)。
本件は、ゴルフ練習場の敷地の所有者が、その土地上に建物を立ててゴルフ練習場を営んでいた会社に対して、借地契約の終了を理由として建物収去土地明渡しを求めたのに対し、土地を賃借していた会社が、本件土地の賃貸借契約は借地借家法により保護されるとして反論したという事案です。
契約の更新拒絶について正当事由を必要となるなどの借地借家法上の保護を受ける土地の賃貸借契約であるためには「建物所有の目的」である必要があります。
借地借家法
(趣旨)
第1条 この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
借地法の事案ですが、現在でもリーディングケースとされ、本件判決でも引用されている判例(最高裁昭和42年12月5日判決)は、借地法1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であつても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解するのが相当であると判示しており、土地の賃貸借契約の「主たる目的」が建物の所有にあるのかどうかが問題となります。
この判例も、ゴルフ練習場の事案ですが、ゴルフ練習場として使用する目的で土地の賃貸借がされた場合には、たとえ当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造、所有することが予定されていたとしても、特段の事情のないかぎり、その土地の賃貸借は、借地法1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということはできない。当該事案では建物の所有が主たる目的であったとは認められないとされています。
これに対し、本件では、判例の「特段の事情」について検討が加えられ、本件の土地賃貸借契約が締結された平成26年以前の昭和56年ころに建てられた本件建物が借地借家法上の「建物」の実態を備えており,それが2階建ての打席のための建築物であり,契約書上も建物の構造や規模,建築費用などが細かく記載され建物所有を目的として借地借家法の適用があることが明記されていたことなどから,特段の事情があったとされ,建物の所有が主たる目的であり,借地借家法の適用があるとされています。本件では建物自体がゴルフ練習場として用途であったことが一つの考慮要素となっており,建物であっても事務所などゴルフ練習場の経営のために必要なものであって練習場そのものの用途としてのものではなかった判例の事案と異なるものと解されます。
鉄道高架下土地の賃貸借契約につき借地法の適用が否定された事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)