令和4年(2021年)6月に改正公益通報者保護法が成立し,同月12日に公布されました。改正法の施行は公布日から起算して2年を超えない範囲において政令で定めるものとされています。

 

 

外部通報の一つである,通報対象事実を権限を有する行政機関ではない,報道機関などの第三者に対してなされた公益通報(3号通報)については,会社にとって不利益な情報を無関係の第三者に流したとして通報者が不利益を受ける恐れが大きくなる一方で,報道などにより事業者の信用世名誉が毀損されるおそれも大きくなることから,保護されるための要件は2号通報よりも厳しくされており,通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があることに加えて,イからホまでの各号のいずれかの特定事由が存在することが必要とされています。

 

公益通報者保護法

(解雇の無効)
第3条
 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。
 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 

今回の改正では,特定事由について改められ,要件が多少緩和されています。すなわち

①内部通報をした場合に通報者について知り得た情報を正当な理由なく漏らすと信ずるに足りる相当な理由がある場合(内部通報をしたくてもできない状況である)を加えたのと

②現在故人の生命身体に対する危害に限定されているのを財産に対する損害の発生又は発生する急迫の危険があると信ずるに足りる相当な理由がある場合も加えられています。

 

(改正法)

 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

ハ 第一号に定める公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合

ニ 役務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

 書面により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

 個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。以下このヘにおいて同じ。)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。第六条第二号ロ及び第三号ロにおいて同じ。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

 

もっとも,この改正で,報道機関などに対する公益通報がこれまでよりも安んじてできるようになったかといえば,あまりそういうことにはならないのではないかという気もします。