令和3年(2021年)4月21日、民法の一部を改正する法律と相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立し、4月28日に公布されています。施行については公布日から2年以内とされています(相続登記の義務化等については3年または5年以内の施行)。

 

 

改正ポイントとして実務上も大きな影響がありそうなものとして、遺産分割の手続きに関する規律の見直しがあります。

具体的には、従来、相続開始後、遺産分割協議において特別受益や寄与分の主張をすることについて特に時間的な制限はありませんでしたが、改正法により、原則として相続開始から10年経過後は、特別受益(民法903条、904条)、寄与分(民法904条の2)の規程が適用されないこととされました(改正法904条の3本文)。

このため、相続開始後から10年経過した後は、各相続人は法定相続分を前提に遺産分割協議を行うということになります。

 

改正民法

(期間経過後の遺産の分割における相続分)

第904条の3 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

 

例外的に、相続開始後10年が経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき(1号)又は相続開始後10年経過する満了前の6か月以内の間に遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合に当該事由が消滅した時から6か月以内に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき(2号)には、特別受益又は寄与分の主張をすることができます。

 

 

相続開始から10年も経過して遺産分割がまとまっていないというのは普通の感覚からするとなさそうという感じもするのではないかと思うのですが、長期間放置していたり、話し合いがなかなか進まずそのままになってしまっていたりする案件もあるので、弁護士としてそうしたケースの相談を受けた場合には時間制限について注意する必要がありそうです。