令和3年(2021年)4月21日、民法の一部を改正する法律と相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立し、4月28日に公布されています。施行については公布日から2年以内とされています(相続登記の義務化等については3年または5年以内の施行)。

 

 

共有者のうちに所在が不明である者がいるという場合があります。太陽光発電の用地取得のために地方の土地を取得したいと考えて調べたところ、登記されている共有者の住所に連絡しても連絡がつかなかったり、当該住所の住民票自体が抹消されていて、他の共有者に聞いても分からないというような状態が発生してしまうことがあります。

 

 

こうした場合に、(裁判所が利害関係があると認めることが前提ですが)当該所在不明の共有者持分についてのみ権限をもって管理する制度が所在不明土地管理人制度で、共有者の中に所在不明者がいる場合にもその持分について適用がされます。今回の改正により新たに新設されたものです。

 

民法・不動産登記法改正 所有者不明土地(建物)管理命令制度の創設 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

 

これとは別に共有者間での共有状態の適正化を図るため、現行法においては、所在不明の共有者がいる場合に、共有者同士で共有状態を解消するために最終的には共有物分割訴訟手続を取らなければならないところ、所在等不明の共有者がいる場合に、新たに対処できる制度が設けられました。

 

 

一つは、他の共有者が、裁判所に請求して所在等不明共有者の持分を自らに取得させるように求めることができる制度です(改正法262条の2 所在等不明共有者の持分取得制度)。

持分の取得を請求する共有者は、その持分の時価相当額を支払ってその持分を買い取るという制度となっており、ただ、当該持分を有する共有者は所在が不明となっているので、裁判所が決定した金額を供託することが必要になります。

 

 

改正民法

(所在等不明共有者の持分の取得)

第262条の2第1項 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で分してそれぞれ取得させる。

 

もう一つは、所在等不明共有者の持分を共有者が取得するのではなく、他の共有者全員が他の第三者に対し当該持分を譲渡することができる権限を付与するように求めることができる制度があります(改正法262条の3 所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度)。

 

改正民法

(所在等不明共有者の持分の譲渡)

第262条の3第1項 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

 

裁判所から権限の付与を受けた共有者は原則として2ヶ月以内に譲渡を行う必要があります。

また、この制度は、所在等不明の共有者以外の共有者もその持分全部を譲渡することが停止条件とされていますので、その共有状態自体を解消することを目的とした制度であるものといえます。

 

 

なお,これらの制度は遺産共有の場合にも適用がされますが,相続開始から10年を経過しないうちは制度の利用ができないこととされています(改正法262条の2第3項,262条の3第1項)。