令和3年(2021年)4月21日、民法の一部を改正する法律と相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立し、4月28日に公布されています。施行については公布日から2年以内とされています(相続登記の義務化等については3年または5年以内の施行)。

 

 

改正点の一つが、現行民法では、他人の土地を使用する必要がある場合に、隣地の使用を請求することができるとのみされている点(現行民法209条)についての改正があります。

 

 

現行民法

(隣地の使用請求)
第209条
 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 

まず、現行法では、隣地の使用について請求できる場合が、文言上、境界(付近)での障壁の設置、建物の築造又は修繕に必要な範囲内に限られているところ、境界やその付近の障壁の他、建物その他の工作物の築造、収去、修繕、境界標の調査、境界の測量といった、現行法では不明確であるもののニーズが高いものについても隣地の利用ができる場合として明文化しました(改正法209条1項1号、2号)。

また、以前紹介した木の枝が越境した場合に関して、越境してしまった木の枝を伐採するために、当該土地所有者は、隣地に立ち入ることができるものとされました(3号)。

 

民法・不動産登記法改正 相隣関係についての規定(竹木の枝の切除) | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

改正民法

(隣地の使用)

第209条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

 境界標の調査又は境界に関する測量

 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 

また、現行法では隣地の使用を「請求することができる」と規定しているのを、改正法では「使用することができる」と改めています。

もっとも、この改正によっても、裁判手続きを経ずして隣地に入ったりすること(自力執行)は許されないものと考えられています。

なんだ、それではあまり意味がないというふうにも考えられますが、現行民法ではあくまでも隣地所有者の「承諾」を必要とするものと考えられるのに対して、改正法ではその必要はないため、請求が認められるための要件(ハードル)が下がったものということはできます。

 

 

なお、隣地の利用を行うための要件として、予め、その目的や日時等について、通知しなければならないものとされています(改正法209条3項)。