判例タイムズ1484号で紹介された事例です(東京地裁令和元年12月2日判決)。

 

 

本件はで問題となった占いサイトは次のようなものでした。

・利用者はメールアドレスなどを入力して会員登録を行う。

・鑑定士からのメールを受信する場合は無料だが、送信する場合には1通あたり150ポイント(1ポイント10円相当)必要となり、ポイントをサイト運営会社から購入する必要がある。

 

 

本件でサイト運営会社と代表者に対し損害賠償を請求した原告は2名で、それぞれ、家庭のことで悩んでいた原告は約700万円、恋愛関係で悩んでいた原告は約52万円を使っていました。

 

 

裁判所は、まず、鑑定の対価を要求する行為が、その内容に合理性がないとか成果が認められないなどの理由で直ちに違法な行為となるものではないと指摘しています。これは、そもそも占いというものがそもそも、非合理的のものであって、結果が必ず当たるというものではなく、そうしたことは占いを依頼した方もわかっているはずであることであるからです。

 

 

ただ、鑑定を勧誘する行為について、不当な目的に基づいてなされ、不当な手段によって鑑定の勧誘がなされ、相手方が正常な判断を妨げられた状態で不当に過大な金銭を鑑定の対価として支払ったような場合には、鑑定の名目で対価を請求する行為は社会的に相当な範囲を著しく逸脱した違法な行為となるというべきであるとしています。

占いの内容自体について裁判所が正当性を判断することはできないので、目的と手段を客観的にみて、正常な判断を妨げられた状態で不当に過大な金銭を支払わされたといえるかどうか判断するということになります。

 

 

本件では、例えば、次のようなメール(下記の一部と要旨です。ポイントが必要となる送信行為に誘導しています)のやりとりがされていたことなどを詳細に認定し、1回のメールでは鑑定が完結されず3回から5回指示通りメールを送信しないと最終鑑定を得られず、最終鑑定後は運勢が上向いたと伝えて満足感を与え、その後別の鑑定士が無料サービス鑑定を送信することでやり取りを繰り返しており、もっぱら金銭を支払わせるという不当な目的の下、心理的に正常な判断ができない状態に陥らせる不当な手段によって、不当に過大な金銭を支払わせたとして、社会的に相当な範囲を著しく逸脱した違法な行為であったとして、サイト運営会社と代表者損害賠償を命じています。

・「○○さんビッグニュースです! 大きな幸福を掴むためのチャンスが迫っています。教えてくれたのはあなたの前世の愛犬です。どうか忠犬の専念に渡る思いに応えてください。文章の頭に「銀へ」とつけた文章を送ってください。「銀へ」とつぶやきながら左手で送信ボタンを押してください」

・「・・・血縁であった僕とあなたと心を結び・・・僕までご送信ください」

・「・・・借金地獄から成功を勝ち取った方もいらっしゃいます。ご決断頂けましたら「決意表明」と文字を打って私にご連絡ください」

・「16年ぶりの財運を得るチャンスを目の前にしているのかもしれません。「16年目の交代」とこちらにご送信頂いた直後に携帯電話にあなたが普段お使いのお財布をくっつけてその状態を30秒保って頂けませんか?」

・「・・・打ち込んだ文字に向かって「授かります」と唱えて私までお送りください」

・「さっそくお授けといきたいのですが、私と息を合わせて行ければと思います。作業開始の前に【装着】と一言合図を頂ければ・・」

(他にもメールのやり取りが挙げられていますが割愛します)

 

 

なお、原告両名のそれぞれの事情に照らして、それぞれ3分の1、2分の1につき過失相殺がされています。原告の一人は、鑑定が本当かどうか確かめるため一度退会するなど冷静に行動していた面もあったとされ過失相殺割合が2分の1とされています。