1 本件で,夫は都内の学校法人の理事を務めており,その退職金が財産分与の対象となるかなどについて争いになりました。退職金の具体的金額の計算と支給自体は,理事を退職した時点で最終的に金額を計算した上,理事会の承認のもとに支給される扱いとされていました。
そして,本件の場合,特段の事情のない限り,理事会の承認のあることを前提として約2191万円が支給される可能性が高いものと認定されています。

2 裁判所は,退職金の持つ性質や右に見た同学園の常任理事在職期間と婚姻期間との関係等から,将来夫が取得する退職金は夫婦の共有財産であり,妻はその2分の1を夫から分与を受けるのが相当であると判断しました。

3 しかし,裁判所は,夫が退職金を確実に取得できるかは未確定なことであり,その金額も確定されてはいないとして,現時点では原告から被告への確定金額の支払を命じることは相当でいとし,本件においては、「将来夫に退職金が支給されたとき,夫は妻に対しその2分の1を支払え。」と命じました。

4 本判決では,「退職金が支払われた時点」での「その支給された金額の2分の1」の支払を命じています。
  とてもシンプルで合理的な考え方ですが,妻にとっては将来夫に退職金が支払われたかどうか,また,その退職金額について探知する負担を負わされることになります。

【掲載誌】 判例時報1618号109頁