【設例】

中小企業のオーナーをしていますが,会社の株式を息子に譲り渡して引退しようかとも考えています。ただ,息子がきちんと経営して行けるのか不安なところもありますし,また,社長になったとたんに好き放題にしてしまうというのも少し心配です。何か良い方策はありますでしょうか?

 

 

1 株式を贈与した場合は,贈与された者(息子さん)が株式の所有者になり,その後,一方的に株式の返還を求めるということは出来ないことになります。


2 そこで,株式を信託して受益者を息子さんとするという方法が考えられます。この場合,受益者である息子さんが有するのは,株式そのものではなく,あくまでも受益権ということになります。


信託契約の中に,いつでも受益権を無償で取り戻すことができるという規定を盛り込んでおけば,後から,受益権を息子さんから取り上げてしまうことも可能です(信託法89条1項)。


なお,税務上,受益者を息子さんに指定したときに,息子さんに贈与税が課税され,さらに,その後,受益権を息子さんから取り上げて自らに変更した場合には,さらに自らに対して贈与税が課税されることになりますので,この点が利用に当たっての問題となります。



3 また,会社が買い取ることができる「取得権付種類株式」を発行し,これを息子さんに譲渡するという方法も考えられます。
この場合,会社の決定によって種類株式を買い取ることになるので,あなたが会社の支配権を有していることが大切になってきます。
また,買い取る場合には無償というわけにはゆかず,時価となります。