【設例】私には現在の妻と前妻との間に息子が一人います。私が死んだあと,私の遺産は現在の妻に相続してもらいたいと思いますが,妻が亡くなった後,妻の兄弟姉妹たちに相続されてしまうのは困るので,その後の相続では,私と前妻との間の息子に相続がされるようにしたいのですが可能な方策はありますか?


1 遺留分の問題はさておき,遺言によって,遺産を現在の妻にすべて譲渡するとした場合,遺産はすべて妻に相続がされます。
そして,妻の相続に際しては,仮にあなたが遺言で前妻との子に相続させると記載していたとしても,それには効力はなく,あくまでも,現在の妻の相続として処理されることになり,妻の兄弟姉妹らが法定相続人ということになってしまいます。

2 そこで,受益者連続型信託という方策が考えられます。
これは,当初指定した受益者が死亡した場合に,さらに次の受益者を指定し,その受益者が死亡した場合にはさらに次の受益者を指定し・・・という具合に,受益者を連続して指定することができるという信託のことを言います。
ただ,あまりに先までの拘束を持たせることは妥当ではないという考えから,信託がされてから30年後までに発生する相続までという制限があります(信託法91条)。
ですので,お尋ねのケースであれば,まず,遺言によって,あなたが死亡した際の相続に際しては,遺産を信託財産とし,受益者を現在の妻とする信託を行い,妻が死亡した際の相続に際しては,あなたと前妻の間の息子さんを受益者とするという内容の信託をしておけば,希望が果たされるということになります。

3 なお,相続税に関しては,通常の場合と同様に課税されます。
すなわち,あなたの相続に際して受益者となった現在の妻に対しては相続税が課税され,現在の妻の相続に際して受益権を取得する前妻との間の息子さんに対しては,死亡した妻からの相続と見做されて相続税が課税されるということになります。