判例時報2453号で紹介された事例です(大阪高裁令和元年12月25日判決)。

 

 

本件は,約3か月弱の間に,6回にわたって高額な商品(天然石を原材料としたチベット地方で古くからお守りとして運気を高める霊石とされている装飾品)を購入させた(合計金額約306万円)販売店の店長らの行為が不法行為にあたるとして損害賠償を求めたという事案です。なお,購入者は高齢者ではなく,30歳代の大卒の会社員です。

 

 

第一審判決は,2回目からの販売行為について不法行為であると判断しましたが,控訴審では,3回目以降の販売行為については不法行為が成立するとしましたが,2回目(金額108万円)の販売行為については不法行為は成立しないとしました。

控訴審が2回目の販売行為について不法行為が成立しないと判断した根拠としては,

・商品の時価が販売価格の10分の1を下回ることを違法性の根拠とした第一審判決の判断に対して,宝飾品の原価率が30パーセント程度というのは普通であって,その他の要素によってはさらに原価率を下げることも可能であって,原価が低額であることのみを持って直ちに暴利行為であるとはいえない。

・店内で多数人に取り囲まれて販売を勧誘されたという主張について,ショッピングモールの店内で他の店舗も含めて多数の人が行き交う通路に面すし,通路側は全空間が解放されており,購入意思がないのに多数人で取り囲んで勧誘説得したという行為があったとは認められず,購入までに2~3時間要したのは高額商品であるために判断を躊躇していたものと考えられる。

・カードでの支払の算段を付けたり,分割払いの手数料を免れるために一度返品扱いとしてキャンペーン期間中に再度決済するなどするために再度,再再度の来店を繰り返しており購入する強い意思が表れていた。

・1回目の販売行為の際に,販売目的があることを隠して,購入者を浄化するという名目で訪店の約束を取り付けて店舗に呼び出していることが特商法の訪問販売に関する規制に反しておりこれが不法行為としての違法性を基礎づけるとの主張については,店舗内で次回の来店や欲をさせることは法令上規定されている販売目的隠匿型アポイントメントセールスとの差異があること,実際に店舗で来店目的のとおりの1回目の購入商品の浄化を行っていること,パワーストーンの浄化は歩くから一体のものとして行われていて浄化目的での来店予約自体を促したことをもって直ちに販売目的を隠匿して来店予約させたとはいうことができないこと,浄化を行った運勢診断士が販売勧誘行為をしたとは認められないこと,作為的に待ち時間を作って販売勧誘をしたとは認められない。

といったことが指摘されています。

 

 

なお,3回目以降の販売行為については,第一審同様,2回目の購入では数種類のカードを組み合わせて何とか支払いができるという状態であったのであるから,3回目以降の購入の支払について困難となることを予見しながら,支払いについて正常な判断ができなくなっている購入者の気持ちにつけ入って購入させていることなどから販売行為が不法行為であるとしています。