本日からさまざまな法律,制度が施行されることになりますが,民法の債権法分野についても全面施行となります。

 

 

このうち,実務上も大きな影響を与えることになる法定利率についての改正概要は下記のとおりです。

 

 

【民法改正による法定利率】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12356944369.html

 

 

改正法による法定利率の適用は,履行遅滞した場合の債務不履行責任に基づく法定利率について,履行遅滞に陥った時期により新旧民法の適用を分けています(改正民法附則17条3項)。

例えば,期限の定めのない貸金契約において,令和2年3月31日に債権者から請求があり遅滞となった場合には旧法の法定利率(年5パーセント)が適用され,同年4月1日に請求があり遅滞となった場合には新法の利率(当初3年は年率3パーセントとなるため,この場合は3パーセント)が適用されることになります。

 

民法附則
(債務不履行の責任等に関する経過措置)
第17条3項 施行日前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百十九条第一項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 

また,交通事故などの不法行為などにおいて,将来発生する損害についての損害賠償額を定める場合の中間利息控除について(将来貰う分を今貰うことになるので,その期間の利息を差し引くという処理),改正民法では明文の規定が置かれることになりました(改正民法417条の2 不法行為に基づく損害賠償請求権について改正民法722条1項で準用されている)。これは,改正民法が変動利率を採用したことから,損害賠償請求権の発生時点での利率を適用することとして(固定利率),処理の簡便を図ったものです。

交通事故において,後遺障害に関する損害賠償請求権(逸失利益)について,中間利息の控除が行われることになります。

 

(中間利息の控除)
改正民法第417条の2第1項 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

 

この中間利息の控除に適用すべき法定利率について,改正民法附則17条2項は施行日である令和2年4月1日よりも前に生じた,将来取得すべき利益等についての損害賠償請求権については適用しないと規定しています。

 

改正民法附則
第17条2項 新法第四百十七条の二(新法第七百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、適用しない。

 

交通事故の後遺障害が施行日以降に発生する事案について,後遺障害が発生したのはあくまでも交通事故時(不法行為時)と考えれば旧法による法定利率が適用されることになりますが,後遺障害の固定時に発生したと考えて新法が適用されると考える余地もあり,この点つにいては裁判例の集積,判断に委ねられることになります。