http://www.yomiuri.co.jp/national/20180115-OYT1T50140.html

 

 

 

破産管財人に申告していない金で、同庁は、隠し資産の疑いがあるとして、破産法違反(詐欺破産)容疑で捜査している。同庁は、山田被告らを融資金の詐欺容疑で再逮捕した後、資産隠しの捜査を本格化させる。

破産法は、破産者の財産は裁判所が選任した破産管財人が管理すると規定しているが、山田被告は自宅で発見された約700万円について、破産管財人に申告していなかった。同庁は、没収されないよう、現金を隠匿していたとみている。

(1月16日読売新聞オンラインから一部引用)

 

詐欺破産罪は破産法265条1項に規定があり,本件では約700万円を自宅に隠していたということなので,財産の隠匿に該当する可能性があるということになります。

 

(詐欺破産罪)
破産法第265条1項 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為

 

また,破産法40条1項では破産者の破産管財人に対する説明義務が規定されており(半法40条1項1号),虚偽の説明をした場合にも罪に問われることになります(破産法268条1項)。

なお,破産者の代理人(申立代理人)も,破産管財人に対し説明義務が課されていますが(破産法40条1項2号),本件で申立代理人である弁護士が多額の現金があるということを破産者から知らされてはいなかったでしょう。

財産を隠匿したいということを告げられたとしてもそれにのっかて加担した場合は代理人自身も罪に問われてしまうことになるので,そのような希望は聞く必要はないということになります。そんなことをしても全く特にならないということを説得することになります。

 

 

(破産者等の説明義務)
破産法第40条1項 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第百四十四条第二項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第五号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
一 破産者
二 破産者の代理人
三 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
四 前号に掲げる者に準ずる者
五 破産者の従業者(第二号に掲げる者を除く。)
 
 
(説明及び検査の拒絶等の罪)
破産法第268条1項 第四十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第二百三十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)又は第二百四十四条の六第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第九十六条第一項において準用する第四十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、説明を拒み、又は虚偽の説明をした者も、同様とする。

 

さらに,破産の申立に当たり,破産法41条に基づいて,財産目録という形で裁判所に対し財産の内容を記載した書面を提出しますが,これについても故意に虚偽記載した場合には罪に問われることになります(破産法269条)。

 

 

破産法第41条 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
 
(重要財産開示拒絶等の罪)
破産法第269条 破産者(信託財産の破産にあっては、受託者等)が第四十一条(第二百四十四条の六第四項において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出を拒み、又は虚偽の書面を裁判所に提出したときは、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 

 

刑事責任のほかには,免責の不許可事由として,財産の隠匿(破産法252条1項1号),虚偽説明(同8号)といったことが規定されています。

 

(免責許可の決定の要件等)
破産法第252条1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
 
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。