現在,民法改正の議論の中で消滅時効期間を一律にしようということも議論されているようですが,今のところ,債権の消滅時効は発生原因によって期間がさまざまであり,最長10年(民法167条1項)から,不法行為に基づく損害賠償請求権(民法724条前段 3年),飲み屋のつけ(民法174条4号 1年)など,長短バラバラです。
ちなみに,弁護士の報酬請求権は事件終了後から2年で消滅時効になります(民法172条1項)。
消滅時効が完成してしまうと,請求できなくなってしまうため(厳密に言うと請求自体はできますが,債務者から消滅時効の主張をされてしまうと負けてしまいます),債権の時効管理は大切になります。
時効には「中断」という制度があって,「中断」が発生すると,進行していた時効期間はリセットされます(10年の消滅時効期間の債権が9年11か月の時点であっても「中断」されると,またゼロから時効期間がリスタートされます)。
中断事由は民法147条に規定があり,一番典型的なのは,訴訟提起することです(同条1号の「請求」)。ほかに,債務者自身が債務の存在を認めてしまうこと(3号「承認」)などがあります。
消滅時効期間が満了しそうなときは,訴訟提起は後回しでもいいから,とりあえず,内容証明などを出して,「催告」しておくということが言われています。「催告」というのは,民法153条に規定があるもので,要は,裁判所を介さないで,請求することです(民法147条1号の「請求」はあくまでも裁判所に対する手続をもって請求することです)。
「催告」をした場合,「催告」から6か月以内に訴訟提起などの民法147条に定められたきちんとした時効中断手続を取れば,その期間内(催告から6か月以内)に時効期間満了を迎えたとしても,時効中断の効果が発生します。「催告」はあくまでも暫定的な時効中断事由ということになっています。
勘違いしている人がいるのですが,「催告」をしたからといって,本来の時効期間が自動的に6か月延びるということはありません。あくまでも「最後の催告をした時」から6か月以内に訴訟提起等の手続を取る必要があります。
たとえば,平成26年6月30日の経過をもって消滅時効期間が満了する債権があった場合に,同年1月31日に催告をしていてたとすれば,6か月以内,すなわち7月31日までに訴訟提起等をしなければなりません。催告したからといって,12月31日まで時効期間が延びるということではないのです。
催告から6か月以内の訴訟提起等のタイムリミットの起算点は「最後の」催告からになります。
前記の例で,1月31日に催告した後,5月31日にも催告していれば,時効満了日は11月30日ということになります。
催告を繰り返しても意味はないと言われているのは,時効期間を満了した後に催告をした場合のことです。前記の例で,1月31日に催告を行い,時効期間満了が7月31日まで伸びたとして,7月に入ってから催告してもそれは意味がないということになります。催告は,時効期間満了前にのみ意味を持つということです。
時効期間満了前に催告を何回か繰り返した場合は,最後の催告のみが意味を持つということになります。
消滅時効期間が満了しそうなときに「とりあえず催告で」というのは時と場合によります。
というのも,「催告」はあくまでも債務者に到達しなければ,効果が認められないので,債務者が行方不明であったり,催告の通知を受け取らない可能性があるような場合には,時効中断に失敗する危険性があることから,最初から訴訟提起等の手段を取るべきです。
訴訟提起による時効中断の場合には,債務者に対する訴状の送達までは必要なく,裁判所に訴状を提出した時点で時効中断の効果が生じるからです(民訴法147条)。