判例タイムズ1389号などで紹介された事案です(東京高裁平成24年11月28日決定)。




相続が発生すると,相続財産は共有状態となります。

相続財産に株式がある場合も同様で,その場合1株が共有状態となります(厳密にいうと株式は物ではないので準共有と言いますが)。



相続財産が3000株あり,相続人が3人いたとしても1000株づつ分割されるわけではなく,3000株すべてが3人の相続人の共有という状態となります。一株―株がすべて3人の相続人のものということになります。そうなると,株式を処分するためには相続人全員の同意のもと進めなければならないということになり,相続人同士の仲が悪いとうまく進まないことになりますので,事業承継などに当たっては問題となります。




本件ではA社の株式3000株の内,2000株がAとBとの共有となっていました

が,AがBに無断で会社の株主総会の議決権行使のための委任状を会社に提出し,会社がその委任を認めたうえで総会決議をしたことから,Bが総会決議の取消を求めて出訴しました。



会社法106条では,「 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」と規定されており,会社側は,但書に基づき会社が同意しているのだから問題ないと主張し,一審では会社側が勝訴しました。




しかし,控訴を受けた東京高裁は,一審判決を取り消して,総会決議を取り消しました。




会社が同意した場合という会社法106条但書をそのまま適用してしまうと,共有状態にある株式について,会社側が自分に都合のよい共有者による議決権行使のみを認めるということになってしまい不都合であることから,同条但書きは共有者間で議決権行使の意思統一が図られているもののそのうち一人を権利行使者として定めて会社に通知するという手続が欠いている場合にのみ適用されるものだとして制限的に解釈しました。




そうすると,会社としては,共有者間で協議がされて意思統一が実質的に図られているのかというところまで分らなければ共有状態にある株式の議決権行使は認ないということになります。

中小企業などで相続が発生して株式が共有状態となることは非常に多いので,注意が必要ですね。



本件は上告の申立て等がされているということです。





■ランキングに参加中です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
にほんブログ村



■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。