昨夜は,私が所属している第二東京弁護士会「高齢者・障がい者総合支援センター」の中に設置されている遺言信託部会が開かれ,部会会議後に遺言執行に関する勉強会,勉強会の後は懇親会,さらに有志で二次会と忙しいくも楽しい一日でした。




勉強会では,私が遺言執行のことについて勉強した結果をお話しをしました。このブログで最近遺言執行に関するテーマを取り上げたのもこの勉強会のための下準備ということもありました。





遺言執行について勉強したり昨日勉強結果を発表したりしていて改めて思ったのは,遺言執行者というのはとても危険(リスキー)な立場であるということです。




遺言によって利益を受ける者からすれば,遺言執行者には迅速に遺言を執行してもらわなければ困るし,何らかの理由で遺言の執行が遅れた場合には任務懈怠ということで責任追及されかねないということです。例えば,遺言執行が遅れている間にリーマンショックなどで遺産の株式や不動産が値下がりした,早く遺言執行して引き渡してくれていれば売り抜けられた,ということで損害賠償請求などもされかねません。




逆に,遺言によって不利益を受ける者からすれば遺言執行者は目障りな存在であり,何とか遺言の執行を阻止しようと,「その遺言は無効だ」とか「遺留分を侵害している」など,クレームをつけてくるという立場になります。




遺言無効や遺留分の侵害などの主張がされた場合に遺言執行者として取るべき立場というのはなかなか微妙な問題を含んでいて,昨日の勉強会でも指針程度のものしかお話しすることはできませんでした。




弁護士が遺言執行者になる場面というのは,遺言の作成段階から関与していることも多いので,自ら作成に関与した遺言の執行でクレームを受けるというのは苦しい立場になります。




この点で,ちらりと思ったのは,最近信託銀行などが遺産整理や遺言執行ということでこの分野に進出することもお多くなり,信託銀行自らが遺言執行者として遺言執行するという場面も多くなっているのですが,遺言執行者のリスキーな立場ということがどこまで理解されているのかというのは少し疑問に思います。




実は,私も,とある案件で信託銀行に遺言執行を託していた方から遺産の分け前を預かるということに関与したことがありますが,遺産の取り分が少なくなってしまう相続人からクレームらしきものが出て,銀行の方は結構プレッシャーを感じていた様子でした。




非弁行為の規制の関係もあって,建前上は,信託銀行の遺言執行業務は,紛争案件には関わらないということですが,遺言執行は紛争のタネが常に潜在化しているということもあり,なかなか微妙なところです。





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