民事訴訟では,自らの主張や相手方に対する反論などを記載した書面を提出しますが,これを「準備書面」といいます。



当たり前のように使っている言葉ですが,よく考えると訳の分からない言葉です。


「準備ってなんやねん?」という感じです。



相手方が素人さんが期日に法廷に来ていて,裁判所から「それでは,次回までにあなたの反論を書いた『準備書面』を提出してくださいね」とサラッと言われたりしていますが,詳しい意味までは分かっていないことが多いのではないかと思います。



準備書面は,民事訴訟法161条に規定があって,「口頭弁論は,書面で準備しなければならない」とされていて,期日までにあらかじめ,書面で準備しておけということなのですね。


もう少しいうと,期日での「口頭弁論」を「準備」するための「書面」ということになります。



ですので,ベテランの弁護士の準備書面の冒頭には「原告(被告は),以下の通り,弁論を準備する」という一文を入れてある準備書面もあります。こういうのを見ると,通だなあと思いますね(‐^▽^‐)。


最近は入っていないことの方が多いですが。




さらに言うと,本来は,「口頭」弁論なのですから,書面で準備した内容は,「口頭」で一言一句述べるというのが原則になります。



しかし,そんな時間はないので,「準備書面の通り,弁論しますね?」「はい,します」ということで,準備した書面を口頭で述べたという取扱いになっています。



あくまでも準備のための書面なので,提出した後に間違いがあったりした場合は,訂正した準備書面を送りなおして,口頭弁論では,そちらの方を陳述(弁論)すると述べておけば,訂正された方の準備書面が述べられたことになります。


もっとも,間違ったことを記載したという事実は残ってしまうので,相手方にうまく利用される恐れはないとは言えないので,準備書面を提出する際には注意深くチェックすべきことは言うまでもありません。



また,準備書面は,口頭弁論期日で「陳述(弁論)」されないと意味がないのですが,(効果がない),準備書面の中に「相殺する」といったことが書かれていた場合,「陳述(弁論)」されないと相殺の効果自体が発生しないのかどうかということが問題になることがあります。


さきほど,「そういう主張をした書面を提出した事実自体は残る」と言いましたが,「相殺する」という意思表示した事実自体は残っているので相殺はできるのではないかということですね。



相殺について言えば,相殺の抗弁は,実質上相手方の主張を認めたうえでの抗弁になるので,訴訟の終盤になって出されることが多く,仮に,「そういう主張を出すのが遅すぎる」として裁判所から相殺の抗弁の提出を却下されてしまった場合,はしたして相殺の効果が発生しているのかどうかが問題になるとされています。



実際上は,裁判所が当事者が主張自体を述べることを認めないということはあまりありませんが。






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