裁判では、刑事事件でも民事事件でも鑑定というものを行うことがあります。

私がよく取り扱っている後見事件(家事事件)でも、判断能力を知るために鑑定することがあります。



鑑定というのは、裁判所が専門家に依頼してその知見をもとに一定の判断事項について意見を述べてもらうことです。



裁判所は、鑑定人の意見には拘束されず、それとは別に独自の法的見地から判断するということになります。



とはいえ、専門知識を有している鑑定人にわざわざ鑑定を依頼しているのですから、裁判所としてもその重みを承知しているでしょうし、わざわざ鑑定人の意見とは違った結論を出すというのにはそれなりの根拠が必要です。


むかしの刑事事件の精神鑑定などでは、何度も何度も鑑定を繰り返して、結局、裁判所の判断に一番マッチする鑑定結果を選んでいるのではないかなどと批判されることもあったように思います。



民事事件での裁判例ですが、遺言の有効性が争われた事件で、裁判所が選任した鑑定人の筆跡鑑定の結果について、裁判所が「信用できない」として排斥したというものがありました。


http://www.egidaisuke.com/legal_info/cat05/q6_02.php



甲田一郎というのが裁判所が選任した鑑定人で、その鑑定によると、遺言は遺言者の筆跡であるということでしたが、裁判所は、考慮すべき事項が十分に検討されていないとして信用できないと結論付けました。



鑑定の中でも、筆跡鑑定というのは、誰が鑑定しても客観的に結論が定まるという性質のものではないので、他の(現在の水準の)DNA鑑定とか指紋鑑定とは少し違って見方をする必要はあると思います。



それにしても、裁判所の鑑定結果が自分に有利に出れば、有利に出た方としてはかなり喜んだと思いますが、そうはうまくはゆきませんでした。





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