1 わいせつ誘拐と監禁などの容疑で男3人逮捕 交流サイトで知り合った10代女 

 性を誘い出し、監禁。車や容疑者自宅で性的暴行を加えた

2 男2人が酒に酔って抵抗できない状態の20代女性に性的暴行を加えた

3 男が走行中のバス車内で、女子高校生の胸をもんだ

4 男が別の男に女子高校生を引き合わせ、現金数万円を受け取らせ、ホテルで性的

 行為をさせた

5 その他

 ・ 放火容疑で男1人

 ・ 大麻所持で男2人

 ・ 恐喝で男2人

 ・ 酒気帯び運転で男1人 ・・・ それぞれ逮捕

 

 以上、2月20日(火)の河北新報の宮城県内ニュース欄の記事です。週明け、警察官の皆さんが頑張った成果かどうかはともかく、宮城県民としては恥ずかしい限りです。しかも、よく見ればさらに落ち込む共通点が一つ・・・。

 

 そうです“すべて容疑者は男性”なのです。男性は人類(つまりは県民)の約半数に過ぎないのにこの体たらくです。しかも1~4の事件は性犯罪、情けないですね。私は宮城県の男性を代表できるわけではありませんが、被害者の皆さんに対し心よりお詫び申し上げます。

 

 そこでレベッカ・ソルニット氏「説教したがる男たち」(左右社)のお話です。

ソルニット氏は私のお気に入りの作家のひとり、BооkОffで偶然発見したのですが、その痛快さには改めて脱帽するしかありません。

 

 こんな一節があります。

「・・・(アメリカの場合)誰にでも銃が手には入るにもかかわらず殺人犯の90%は男性なのだ」ということです。

 また「・・・報告されている限りでは(アメリカでは)6.2分間に1度、レイプが起きている」とも紹介されています。もちろん、そのほとんどが男性よるものだそうです。

 

 日本でもよくアメリカの銃犯罪が批判され「アメリカって怖いよね・・・」といった言説が流れます。確かにアメリカでの銃犯罪は怖い。レイプも同様。

 しかし、少なくとも女性にとっては「宮城県って怖いよね。しょっちゅう男が性犯罪を起こすんだもの・・・」ということになるでしょう。アメリカを見下している場合ではありません。

 

 さて、国会では選択別姓制度の導入同性婚の合法化、そして性的マイノリティの人々への差別禁止が議論されています。しかし、皆さんご存知のとおり、自民党と岸田政権はブレーキを踏み続けています。

 今日の国会中継で立憲民主党の泉代表の質問に対し、岸田は議論は必要と言いつつ、自分の考えは一切拒否しています。現状でこの国の政府は何も変わろうとしていません。国民の意識はとっくの昔に代わっているのに、です

 もっとも「G7が近いから・・・」などと言って批判し、対応をせっつくのは幼稚だと思います。会議の場で、岸田が他の6か国の首脳から笑われればいいのです。

 

 ところでソルニット氏は本書でジェンダーの問題に触れてこう述べています。

「・・・同じジェンダーを持つふたり人間同士の結婚は、本来平等なものだから ― たまたまいろんな形でそのうちのひとりがより多くの力を持つことがあっても、ほとんどの場合それは平等な人間同士の関係であり、ふたりは自分たちの関係を自由に定義できるのだ。

 ・・・(そして)アメリカの保守派たちはこの平等主義を恐れている。もしくは単に拒否反応を示している」

 さらには「・・・結婚の平等に脅威を感じる人々は、同性カップル間の平等だけでなく、ヘテロセクシュアル(異性)のカップル間の平等にという考えも恐れているのだ・・・」と敷衍しています。

 

 日本国憲法では「婚姻は両性の合意のみで成立する」とは規定されていますが「異性の二人でなければ婚姻できない」とは書いていません。従って、法学界では同性婚は禁止されていない、というのが定説です

 それでも選択的夫婦別姓や同性婚に反対する人々に言わせれば、婚姻やそれに基づく家族においては“妻は夫に従うべきで、子どもは親の理不尽な言いつけにも背くべきではなく”しかも“国民は誰しも結婚して何が何でも子どもをもうけなければならない”のです。何とはた迷惑な思考回路なのでしょう。

 

 ここで本書のタイトルについて触れたいと思います。ネタバレで申し訳ないのですが、書かずにはいられません。

 ソルニット氏が友人とあるパーティーに出席した時のことです。一人の中年の金持ち男性が話しかけてきます。ソルニット氏が物書きだと分かると、彼は「今年の重要な本は・・・」を知ったかぶりで話し始めます。しかし、彼が紹介したのはソルニット氏の本なのです。友人が「あなたが言う本を書いたのこの人」と言っても意に介しません・・・。

 一体どういうことでしょう。つまり、かの金持ち男性にとって「重要な意味を持つ本を書けるのは男性だ」という確信なのでしょう。

 私はこれを読んで、どこかで聞いたことがあるシーンだなと思いました。そうあの森喜朗です。困った男というのはアメリカも日本も同じであるようです。

 

 ちなみにソルニット氏は本書で、レイプや虐待を受けた女性のトラウマに関するジュディス・ハーマン氏の著書の一節を紹介しています。

「・・・(被害者に)秘密を守らせ沈黙させることは、加害者の第一の防衛線である。秘密が暴かれた場合には、加害者は被害者の証言の信頼性を否定する。被害者の口を完全につぐませることができなければ、加害者は、誰も彼女に耳を傾けないように仕向ける。・・・残虐行為のたびに、わかりきった同じ内容の弁明が繰り返される

訴えのようなことは起こっていない

被害者は嘘をついている

被害者が自ら招いた結果だ・・・

 

 どうでしょう。これもどこかで聞いたことがあるような気がしませんか?

 そうです。ジャーナリストの伊藤詩織さんに対し性的暴行を働いた山口敬之やこの男を擁護した支援者が言い募った言説そのものです。あの杉田水脈も「・・・女は嘘をつきますから」と言ってましたね。

 

 私ははじめ、本書「説教したがる男たち」を“すべての日本人男性に読んで欲しい”と結ぶつもりでした。しかし、ここまで来て、どうも違うなと思っています。

 本書「説教したがる男たち」はすべての日本人男性、特に成人で、金持ちで、自民党支持者で、保守という名をかたる右派の人々、そしてそんな男たちとつるむ女性は読むべきです。

 

たとえ理解できなくても・・・

 

・・・今日のBGMは“Burt Bacharach”のあまたのヒット曲、昨年来、よく知った音楽家が亡くなっています。寂しいですね。