手元に「靖國神社と聖戦史観」内田雅敏著:藤田印刷エクセレントブックス)という一冊がある。

 著者は弁護士で長年、戦時中の徴用工問題等に取り組んできた。ちくま新書から出た「元徴用工和解への道」も好著だった。

 本書は靖國神社という薄気味悪い宗教法人について、より深く、そして公正に理解するのに最適な本だと思う。

 冒頭にこうある。

 

「・・・靖國神社参拝批判は、戦没者に対する追悼批判ではなく、靖國神社という場でそれが行われ ることへの批判なのです。 ・・・それは靖國神社がA級戦犯を合祀していることが問題なのではなく、靖國神社がA級戦犯合祀に象徴される「聖戦史観」に依って立つ戦争神社であるからです。 ・・・靖國神社はA級戦犯分祀を絶対にできません。分祀したら、その瞬間に靖國神社でなくなってしまいます。」

 

 この一文で私の理解が不十分だったことが明らかにされた。目からウロコが落ちるというのは、まさにこのことか。

 

 靖國神社発行の「やすくに大百科」にはこうあるそうだ。

「・・・戦争は本当に悲しい出来事ですが、日本の独立をしっかりと守り、平和な国として、まわりのアジアの国々と共に栄えていくためには、戦わなければならなかったのです。」

 

 太平洋戦争開戦に当たっては、軍人も含めて非戦を唱えた人々がいた。歴史の選択として開戦回避もできたのだ。しかし、当時の日本政府は開戦を選択し、多くの国民はこの決定に熱狂した。

 しかし、くどいが“戦争は回避できた”のだ。しかも「アジアの国々と共に栄える:大東亜共栄圏構想」も後付けだったことは証明されている。極東軍事裁判の結果を見るまでもなく、太平洋戦争を聖戦などとすることはあり得ない

 

 ところで、靖国神社が大好きだった安倍晋三が殺害され、予想はしていたがメディアはこの事件でもちきりだ。この事件を“テロ”と呼ぶ人も多い。政治家やジャーナリストの中には“言論の自由の封殺”とか“民主主義への挑戦”とか叫ぶ人がほとんどだ。しかも、中には“暗殺”という言葉を安易に用いる軽輩も出てくる始末。犯人・山上は白昼、堂々と殺人行為を実行したのであって、闇夜に紛れてこそこそ襲うような暗殺ではない。

 

 安倍晋三は当時、ただの衆議院議員だったのだ。ということは山上容疑者の供述どおりだとすれば、この事件はただの“怨恨による殺人事件”だと私は思う

 この国でも殺人事件は起きている。しかし、被害者が一介の庶民の場合、だれも“テロ”とは言わない。安倍殺害がテロなら、一般庶民に対する殺人も“テロ”ではないか。なぜなら、この国においては“庶民は主権者”つまり政治上最も重要な存在だからだ

 

 事件後、メディアから流れる報道には醜いものが多い。

 政府は秋に国葬をする方針だそうだ。止めて欲しい。安倍晋三は国葬に値する人間ではない。数々のスキャンダルの源だったのは周知ではないか。この人物のためになぜ葬儀を大金かけて行わなければならないのか。やりたいなら岸田と自民党負担でどうぞ。ただし、我々からの税金の支出は断じて認めない

 

 昭恵夫人が遺体にほおずりして悲しんだという。仲良し夫婦だったのだからいいではないか、放っておけばよい。しかし、昭恵夫人とてトラブルメーカーであって、ファーストレディーにふさわしい人物だったとは思わない。

 

 石巻市は市民の弔意を受け付けるため、記帳所を設置したそうだでは、新生党党首として政権を握った羽田孜元総理が亡くなった際にもそうしたのか、市に問い合わせているが、未だ回答はない。羽田元総理死去の際に記帳所を設置しなかったとすれば不公平極まる。

 

 何より、参議院議員選挙が予想どおり、いやそれ以上に酷い結果だったことが残念だ。安倍晋三への同情票が自民党圧勝の一つの原因になった。桜井充は当選してしまった。宮城県民として恥ずかしい限りだ。この裏切り者は当選後のインタビューでこう言ったそうだ。

 

日本はすばらしい国と言ってもらえるような国づくりを行っていきたい。宮城県選出の国会議員なので、ふるさとの発展のために尽くしていきたい」

 

 政治家がどんな言葉で発言を始めるのかは非常に大事だ。桜井充が最初に言うべきは、前回の選挙で彼に投票した“自民党支持者以外の有権者に対する謝罪”だろう

 

 「日本はすばらしい国」と言ってもらえるような国にしたいとのことだが、誰にそう言って欲しいのだろう? 自民党支持者か? それとも前回選挙の支持者か? ど ちらなのだろう桜井君! 

 これだけは言っておきたい。今回のような酷い裏切り行為をする卑劣漢にそんな崇高な仕事ができると思うのはお人好しに過ぎる。自民党県連は党本部に逆らっても石川光次郎氏を擁立すべきだった。そんな腰抜け県連を有難がる自民党支持者はオカシイ。

 

 何より、桜井の発言には我々国民、富裕層ではない庶民、有権者という言葉が出てこない。この男の思考はすでに安倍晋三等の右派のそれそのもので、和田政宗と合わせて宮城県の右傾化は完成に近づいていると言えるだろう

 

 加えて宮城県でもNHK党の候補にも1000票ほどが入ったというからあきれる。ポスターも貼らず、演説もろくにしない。そんな候補に投票してどうするのか。そんなことだから比例代表でわけのわからないユーチューバーを当選させてしまう。当選した“ガーシー”なる人物は当選が決定した時はドバイにいたという。そんなび半分もいいところの人物を国会議員にし、歳費として大金を支払い、N党には政党助成金を恵む。すべては我々の税金で。これが民主主義と言えるのか! 

 

 すでにこの世を去った人物を悪用する勢力に迎合、付和雷同する国民。

 円安・物価高で庶民生活が苦しいのに、政府・与党に投票する国民。

 戦争になれば真っ先に命を落とすのは、庶民の子ども(若者)なのに軍備拡大を指示する国民。

 

 日本人はアメリカの大統領選挙を“ポピュリズム”と呼んで蔑む資格はない

 

・・・今日のBGMは“Art Pepper”の「Art Pepper meets The Rhythm Sectiоn」、乾いた感じのサックスが心地よい。