平井美帆著「ソ連兵に差し出された娘たち」(集英社)を読み終えた。あえて一言で言えば「重い」としか表現のしようがない。

 1945年(昭和20年)に旧満州で起きた出来事を、当事者への丹念な聞き取りによって明らかにしたノンフィクションだ。

 

 著者が終盤でまとめのような部分を書いているので紹介したい。

「・・・大義名分の下、国家は国民のもっとも弱い層を盾に使う。その中でまた盾にされる人間が生まれる。その盾になる犠牲が女性であったとき、またさらに貶められてしまう・・・」

 

 現在、消費者物価が上昇中で、庶民の生活を圧迫している。だがそれは黒田東彦や岸田文雄にとっては痛みを伴うことがない。

今日はついに東京電力管内では電力ひっ迫警報が出された。昨日のように、熱中症で命を落とす人が出るに違いない。ただし、それが富裕層でないことは確かだ

 

 平井氏はこうも書く。

「・・・“非常時だから”・・・しかし、その許容には、根拠なく設定されている前提条件がある。自分が犠牲にされない限り、である」

 そうなのだ。今国の人々は、自分に危害が及ばないと危機を意識できない。沖縄に米軍基地の大部分があるのに「自分たちの目の前に基地がないから」と、その危険と負担に思いが及ばない。

 

 日本の経済状況は非常時に近づいていると思う。だが、自分が犠牲になっていると思う必要のない人々(政府、与党、富裕層)にとっては許容範囲なのだろう。

 しかも、そういう人々に限って「防衛予算の増額」を主張するのだ。軍備、おっと防衛装備にお金を投じても、庶民生活が直接的に好転することはない。しかし、防衛産業は潤い、政府・与党は権力を失うことがない。両者はウイン・ウインだが我々、庶民の生活はいつまでたっても低空飛行を強いられる敗戦から70年以上経つのに、未だにこの国では弱者が虐げられる社会であり続けている

 

 で、参議院議員選挙がやってくる。全国的には与党と改憲勢力が優勢なのだそう。恐ろしいことだ。ウクライナ戦争にかこつけて、国民の危機感を煽り、防衛予算を増やせば庶民の生活が好転するとでも思っているのだろうか。そんな思考停止を旨とする自民党、公明党、維新の会、NHK党などに投票する人はどうかしている。

 

 我が宮城県の状況も酷い。

 有権者を裏切って平然としている桜井充が優勢なのだそう。あきれてものが言えない。あんな恥知らずの人物を支持する自民党県連こそ「日本人の誇りと伝統」を破壊する集団というべきだろう

 NHK党の候補にいたっては原発問題に何のコメントもしなかった。曰く「党の公約にないから」だと・・・。バカも休み休み言ってもらいたいものだ。月、2000円ほどを払うのが嫌ならテレビを置かなければ良いだけの話だ。そんな問題ともいえない問題を公約にする候補に投票するなんて、それこそ紙の無駄と言うべきだ。

 

 現状、選挙は自民党が勝ち、維新の会が伸び、改憲勢力は3分の2を超えるだろう。日本維新の会の母体である大阪維新の会が主導する大阪では、東京都よりも多くのコロナ死者を出した。大阪では改革の名の下に、保健所と保健師が切り捨てられたことも原因の一つとされる。そんな弱者を切り捨てた党をどうして支持できるのだろう? 

 一方、国民民主党は伸びないだろうが、玉木雄一郎は勝ち馬に乗ろうとし、ただの太鼓持ちに堕すだろう。結果、この国では防衛オモチャに大金を浪費し、庶民は相変わらず日々の生活にあくせくすることになる

 自民党や維新の会に投票する人は、その1票が富裕層だけを潤し、-方では自分の首を絞めていくことに気づかない。

 選挙の結果だからと言いつつ、それが自分たちの選択の結果なのに・・・。

ああ~。

 

・・・今日のBGMは“WYNTON KELLY TRIO - WES MONTGOMERY”の「SMOKI‘N AT THE HALF NOTE」、軽やかなピアノとギターのコラボが爽快だ。