私の心の中には小さな口がある。
その口はいつもしぼんでいて、
滅多にひらくことはないのだが
彼はときどき口をひらく。
その小さな口がひらかれると、
そこからこぼれてくる華奢な言葉が
あえかな言葉の切れ端が、私に語りかける。
その口がひらくことを望んでいない。
その唇がひらかれることを望まない。
その口はそっと悲しみを語りかけてくる。
いつもその口を見ないようにと心がけているのだが、
ふと気づいたときにその口がこちらを見上げている。
じっと白紅めいて、今にも語りかけてきそうな唇を心の中に感じるとき、
もうやめてくれ、もうやめてくれと、かぶりをふり
さえぎろうとするのだが、
無言のうちにその唇は語りかけている。