赤い口 | egalite詩集

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夜の高くて広くて遠いところ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の心の中には小さな口がある。

 

その口はいつもしぼんでいて、

 

滅多にひらくことはないのだが

 

彼はときどき口をひらく。

 

 

その小さな口がひらかれると、

 

そこからこぼれてくる華奢な言葉が

 

あえかな言葉の切れ端が、私に語りかける。

 

その口がひらくことを望んでいない。

 

その唇がひらかれることを望まない。

 

 

 

その口はそっと悲しみを語りかけてくる。

 

いつもその口を見ないようにと心がけているのだが、

 

ふと気づいたときにその口がこちらを見上げている。

 

じっと白紅めいて、今にも語りかけてきそうな唇を心の中に感じるとき、

 

もうやめてくれ、もうやめてくれと、かぶりをふり

 

さえぎろうとするのだが、

 

無言のうちにその唇は語りかけている。