夜の一人 夜にたった一人でいるときは 夜が恋人であることに気づく。 夜に接し、夜によりそい、夜に耳傾ける。 この中に夜がぼうっと広がっていて静かな笑みを浮かべている。 夜は耳をすませ、大きな腕(かいな)で抱きとめようとする。 何の意図もなく。 ただこの夜の真ん中に落ちこぼれてきた子を 受け止めるように。 あるいは夜に はぐれてしまった迷い児を受け入れるように。 静かな夜の森は広がっている。