この一連の文章の、はじまりの場所にもどってきた。(※1)

 

 9月30日は日曜日。台風が日本列島を縦断し、関東は夜になってから風雨が強くなっていた。地域によっては停電もしていた。

 

 そんな嵐の夜。日付が変わったところで、SUPER☆GiRLSの公式ツイッターが「メンバーに関して重要なお知らせ」をアップした。(※2)

 

 公式ホームページには、渡邉ひかる、宮崎理奈、溝手るか、浅川梨奈、内村莉彩の5人が卒業すると書かれていた。卒業ライブは2019年1月11日。三ヶ月後だった。(※3)

 

 卒業するメンバーが5人。残るメンバーは4人。卒業する人数のほうが多い。ファンは混乱した。GEM、チキパとつづいたエイベックスのリストラがここに極まったと感じ、事実上のスパガの崩壊だとつぶやく者もいた。

 

 三期メンバーの阿部夢梨が数ヶ月前に感じた衝撃を、ここでファンが感じることになった。ただ、ひとつだけ違っていることがある。

 

 渡邉幸愛が残っていた。

 

 この夜、卒業メンバーたちのブログがネット上にアップされたあと、いちばん最後に渡邉幸愛のブログが現れた。彼女のブログから長く引用する。(※4)

 

 『皆様へ』──

 

(…)

 

今回の卒業ですが、1ヶ月前まで、私も

その卒業メンバーの中にいました。

 

14年間のアイドル人生を振り返ってみて。

そしてどうなりたいかの

これからの自分の人生を考え、

悩んで悩んで悩んだ結果

卒業を決めていました。

 

決意して事務所の方とお話をしたりして

卒業に向けて着々と進んでいく中で

 

いざ、蓋を開けてみると

卒業を決めていたメンバーは

1期、2期の6人でした。

 

他のメンバーも卒業を決めていたことは

正直すごく驚いたし、

大好きな先輩、大切な同期

 

この人たちが卒業してしまうスパガが

私が本当に居たい場所なんだろうか、って

自分自身に問いかけたときに

やっぱり、それは、違ったし

 

いまの9人だからこそ、見たい景色があって

一緒に活動してきて楽しかったんだなって

そう感じました

 

卒業の決断はきっと間違ってなかった

そんな風に思っていました

 

だけど、卒業を決めてから、

活動をしていく中で、どこかで

自分の中に違和感があって、

 

それはなんなんだろう?って

考えたけど全然わからなくて、

 

足りなくて足りなくて笑

足りなすぎる私の頭を全力で

フル回転して、考えて考えて

考え続けました。

 

そして出てきた答えは、

私は最後の最後まで

自分のことばかりだなってことで。

 

グループに加入して、4年

来年の2月で5年になるのに、

私はグループのために何かできたかな?って

考えたときに、全然ないじゃん!

自分のばかやろーって!笑笑

 

加入して、必死でがむしゃらだった最初の2年

自分のために頑張ってきた2年

 

今度は、グループのための時間を

過ごしたい!!!って思いました

 

1人じゃ不安すぎるけど

今なら、蛍、夢梨、しおり

 

とっても頼れる後輩がいます。

 

それに、逆にね?

この3人だけ残して卒業なんて

できないじゃんか!!って思った笑

 

気づくの遅かったw 3期ごめんねw

 

私はどうしても、この3期だけを残して

卒業することが嫌で、

3期に沢山の負担を残して

グループを去ることが嫌で

 

誰かに説得されたわけでもなく、

誰かに何かを言われたわけでもなく

自分で、残ることを決めました。

 

私が1人だけ残ってできることなんて

ちっぽけなことしか無いと思うんだけどね

 

大好きなこのグループを

最後に私の全てをかけて守りたいって

思いました。

 

先輩方がしてきてくれたように!

 

(…)

 

 ──このように書いたあと、ファンへの気遣いを見せ、オーディション中の未来の新メンバーへも声をかけてから…

 

ほんとさ、よく続けるよねー私も。笑

やんなっちゃうよー笑笑 

けど、これが私だな、とも思う。笑笑

 

 ──と笑う。そして…

 

最後になりますが、皆様にお願いがあります。

新しく入ってきてくれるメンバーの子達

そして3期の蛍、夢梨、しおり

 

みんなすごくすごく不安だと思います。

 

私だけでは支えきれない、

救ってあげられない部分もあると思います。

 

だから、3人のこと、

いっぱい支えてあげて欲しいです。

 

 ──と書いて、文章を結んでいる。

 

 とても心に響く文章なので、できればぜひ全文を読んでいただきたい。

 

 嵐の夜に、あるいは朝起きてみたら突然、9人のグループから、5人ものメンバーが卒業することを知り、なんだそれ!? と混乱しているときに、このブログは小さな光になったと思う。

 

 いちど卒業を決め、先輩、同期の5人が同時に卒業することを知っても、「卒業の決断はきっと間違ってなかった」と感じていた彼女が、どうして卒業を撤回し、残ることにしたのか?

 

「卒業を決めてから、活動をしていく中で、どこかで自分の中に違和感があって──」彼女は考えつづける。そして、自分のことしか考えていなかった、グループのために何かできたのか、と思い至る。そこで後輩の存在に気づいて、「この3人だけ残して卒業なんて、できないじゃんか!!って思った──」

 

 渡邉幸愛は「私はどうしても、この3期だけを残して卒業することが嫌で、3期に沢山の負担を残してグループを去ることが嫌で──」と書いている。

 

 このあたりの文章を読んで、頭に浮かんだのは「Party Rockets(パーティロケッツ)」のことだった。

 

 パティロケは2012年に仙台で結成され、渡邉幸愛は初代リーダーだった。2013年、SUPER☆GiRLSへの加入を打診された彼女は、12月にパティロケから卒業する。このときパティロケに残されたメンバーは3人だった。

 

 渡邉幸愛がスパガからの卒業を決めたあと感じた「違和感」の正体は、パティロケ卒業時の苦しみからきていると思う。どこまで自覚していたかはわからないが、スパガに残される3人の後輩の姿に、パティロケに置き去りにしてしまった3人の仲間を感じたのではないか。だから「どうしても、この3期だけを残して卒業することが嫌で、3期に沢山の負担を残してグループを去ることが嫌」だったのだ。

 

 ずっと整理できない気持ちが彼女のなかにあったのだろう。

 

 スパガの崩壊のような大量卒業のなか、渡邉幸愛の決断は献身的に見える。でも、救世主あつかいするつもりはない。彼女はただ単純に、忘れ物をしていることに気づいて、それを取りにもどっただけなのだ。

 

 だから、「──気づくの遅かったw 3期ごめんねw」と笑っている。

 

 それでも多くの人の気持ちを癒やしたことは間違いない。三期の阿部夢梨はインタビューでこう話している。(※5)

 

 ──先輩がもともと6人卒業される予定だったので、じぶんの目標もわからなくなってしまった。そんな時期に、幸愛さんが残るって決めてくださったおかげで、私も、もうちょっとスーパーガールズとして全力で頑張りたいって思った。

 

「幸愛さんは私にとって本当にまた夢を持たせてくれた大切なひとです」

 

 迷子になった阿部夢梨のもとに、渡邉幸愛はもどってきた。灰色のガンダルフが白の魔法使いとしてもどってきたように。

 

 すこし先走った話をすれば、第四章の楽曲「ナツカレ☆バケーション」と「片想いのシンデレラ」では阿部夢梨がセンターとなっている。

 

 「ナツカレ」の振りつけではクライマックスで渡邉幸愛が阿部夢梨の告白を後押しする。

 

 「シンデレラ」では渡邉幸愛が阿部夢梨に魔法をかける。

 

 コミカルで楽しい演出なのだけれど、上記のインタビューを意識してふたりのダンスを見ると、また違った感慨がある。

 

 卒業発表時の公式ホームページには、5人の卒業メンバーのコメントが載っている。そのなかで浅川梨奈だけが、ひとりのメンバーにむけた一文を残している。(※3)

 

「こうめ、隣で支えてあげられなくてごめん。本当にありがとう」

 

 

 ──「コングラCHUレーション!!!!」につづく

 

 

(※1)本ブログ:「嵐の夜に…」2018年の渡邉幸愛 | マニファクチャード・ガールズ・クロニクル

 

(※2)SUPER☆GiRLS・公式のツイート: "SUPER☆GiRLSメンバーに関して重要なお知らせ https://t.co/wY5nyK107w"

 

(※3)SUPER☆GiRLSメンバーに関して重要なお知らせ|NEWS|SUPER☆GiRLS(スパガ) Official Website

 

(※4)皆様へ | 渡邉幸愛(SUPER☆GiRLS)オフィシャルブログ 「幸愛のはぴらぶろぐ♪」(2018-10-01 00:43:31)

 

(※5)SUPER☆GiRLS 新たなる道へ (阿部夢梨編) - YouTube